【国税庁公表】令和4年事務年度 所得税及び消費税調査等の状況を税理士が解説

令和4年事務年度 所得税及び消費税調査等の状況




【国税庁公表】令和4年事務年度 所得税及び消費税調査等の状況を税理士が解説

こんにちは!

 

税理士・行政書士・社会保険労務

の齋藤幸生です!

 

今回は・・・

国税庁が2023年(令和5年)

11月に公表した個人に対する

調査実績について解説します。

 

それでは、スタートです!!

 

所得税と消費税の調査状況

令和4年事務年度とは

令和4年7月から令和5年6月までの間の実績になります。

 

調査では次の分類として

国税庁は認識しています。

 

実地調査になる調査とは

特別調査・一般調査・着眼調査を言います。

 

上記のうち特別調査と一般調査は

高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行うもので、特に、特別調査は、多額な脱漏が見込まれる個人を対象に、相当の日数(1件当たり10日以上を目安)を確保して実施しているものです。

令和4年事務年度 所得税及び消費税調査等の状況より

 

着眼調査とは

資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に実地に臨場して短期間で行う調査です。

令和4年事務年度 所得税及び消費税調査等の状況より

 

結果、税理士が関与する事業者が

受ける調査とは着眼調査が主流で

 

特別調査や一般調査は脱税などが

疑われるような事業者に対して

行われる調査になります。

 

最近は簡易な接触という調査

手法があります。

簡易な接触とは、原則、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正するものです。

令和4年事務年度 所得税及び消費税調査等の状況より

 

簡易な調査は申告書の誤りや

更正の請求による添付書類の

未提出対応も含まれます。

 

所得税と消費税の調査では

特別・一般調査が35,751件あり

前年度が24,067件よりも増えている

ことがわかります。

 

一般に調査は消費税の課税事業者

であれば所得税と消費税の両方が

一度に行われます。

 

このうち、申告漏れ件数は

31,271件になり

 

申告漏れになった所得(利益)

は5,204億円でした。

 

追徴された本税は818億円で

罰金になる加算税は162億円

合計で980億円でした。

 

こうしたことからわかる通り

悪質な案件では87%で申告漏れが

発覚して追徴されていることが

わかります。

 

従って、ある程度、証拠や

申告漏れが分かっている段階で

調査を行っていると感じます。

 

対して、税理士が顧問にいるような

事業者が行われる着眼調査では

 

調査件数は10,555件で前年度は

7,340件になります。

 

このうち申告漏れになった件数は

7,150件でした。

 

追徴された本税は31億円になり

罰金の加算税は4億円で合計

35億円でした。

 

このように申告漏れは発覚する

ものの特別・一般調査のような

規模で発生する申告漏れは

 

金額が少なくなっていることが

わかります。

 

特別・一般と着眼で調査件数が

約4.5倍違いますが

 

申告漏れを指摘された金額が

4.5倍になっているわけではなく

 

ある程度、税金対象になる部分

が申告されていることがわかります。

 

個別的な記事にされている

個人としては

①富裕層

②海外投資を行っている

③ネット関連

④無申告者

が上がっています。

 

この意味は国税庁が特に調査を

強化している分野になり

 

調査対象になっていないだけで

調査に至っていない方への周知

という側面から公表されていると

考えます。

 

ネット関連をしている個人に対する調査

個別の事業者について公表

が行われているため

 

ここではネット関連について

解説を行っておきます。

 

ネット関連の範囲は

インターネット上のプラットフォームを介して行うシェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引や暗号資産(仮想通貨)等の取引を行っている個人に対しては、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています。

令和4年事務年度 所得税及び消費税調査等の状況より

 

公表資料としては

シェアリングエコノミー等と

暗号資産関連の調査状況です。

 

まず、シェアリングエコノミー

等については

 

今年度の調査件数は1,324件で

前年度は839件でした。

 

申告漏れの件数は1,148になり

申告漏れになった所得は

200億円でした。

 

追徴された税金は42億円

となっているようです。

 

1件当たりの申告漏れ所得は

1,508万円になり

追徴税金は320万円です。

 

以上からわかる通り

調査件数に対する申告漏れ

割合は約86%です。

 

基本的には何かしらの申告漏れが

発生していることがわかります。

 

 

 

暗号資産の今年度の調査

件数は615件で前年度は

444件でした。

 

申告漏れ件数は548件で

申告漏れ所得は189億円

追徴税金は64億円でした。

 

1件当たりの申告漏れ所得は

3,077万円になり

追徴税金は1,036万円でした。

 

調査件数に対する申告漏れが

発生した割合は約89%です。

 

シェアリングエコノミーと

同様に発覚する可能性が高い

結果になります。

 

金額などに関する分析は

無申告者に対する調査の

ところで解説します。

 

 

無申告者に対する調査

無申告者に対する国税庁の

考え方は

無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすこととなるため、的確かつ厳格に対応していく必要があります。こうした無申告者に対しては、更なる資料情報の収集及び活用を図るなどして、実地調査のみならず、簡易な接触も活用し積極的に調査を実施しています。

令和4年事務年度 所得税及び消費税調査等の状況より

となっています。

 

始めに所得税の今年度の

調査件数は5,229件で

前年度は3,828件でした。

 

申告漏れ所得は1,418億円で

追徴税金は224億円でした。

 

1件当たりの申告漏れ所得は

2,711万円で、追徴税金は

429万円になっています。

 

消費税の今年度の調査件数は

7,615件で追徴税金は198億円

1件当たりの追徴税金は260万円

になっています。

 

さて、ネット関連と無申告者の

1件当たりの金額が大きいと

感じると思います。

 

これはからくりがあり税務調査は

一般的に過去3年分が対象です。

 

無申告者に至っては悪質な場合は

5年遡って行われることがあります。

 

さらに脱税などが疑われる

ケースを想定すると7年遡る

ケースがあります。

 

こうした理由があるために

青色申告と白色申告では

法定帳簿などの保存期間が7年に

設定されていることになります。

 

ネット関連のうち

シェアリングエコノミー等の

事業者は

①シェアリングビジネス

②ギグワーカー

③デジタルコンテンツ

④ネット通販等

⑤ネット広告

⑥その他

に分類されているため

 

最低でも3年は遡り3年分

すべてにおいて申告漏れを

指摘されたり

 

またはすべての期間が無申告

のような状況だと1件当たりの

金額が大きくなるわけです。

 

シェアリングエコノミー等では

1件当たりの申告漏れ所得は

1,508万円ですが

 

3年間にわたって無申告だと

仮に想像すると1年あたり

500万円が無申告になる計算です。

 

そうすると売上500万円の個人が

大勢いたと想像することが可能です。

 

仮想通貨の申告漏れ所得は

3,077万円になりますが

 

こちらは過去から現在までの

金額の増加分を考えると

3年分で1年1千万円といった

想像ができます。

 

無申告者については

1件当たりの申告漏れ所得は

2,711万円になっていますが

 

5年遡って調査されたとすると

大きくなる可能性があります。

 

5年遡って調査されたと考えると

1年あたり540万円と

考えられるため

 

事業者としては零細規模の

事業者が何も知らずにまたは

 

知っていたが面倒で無申告

状態になっていたのではないか

と想像することができます。

 

仮に税務署の恩情で3年遡り

であったと仮定すると

1年あたり900万円になります。

 

1件当たりの金額が大きくなる

ように思いますが

 

1年あたりと考えると

事業者としてはそこまで大きな

金額にはいたっていないのだと

考えられます。

 

ただ、無申告者の場合には

税務調査後も確認調査がその後

行われるケースになると思います。

 

例えば、税理士の関与をつけないで

申告しているなどの場合には

 

まだ不正をしている可能性がある

と考えられるからです。

 

 

 


編集後記

令和5年事務年度を考えると

今後も調査は多くなると思います。

 

同業者と話していると確かに

令和4年事務年度は調査が以前

に戻ってきたなと感じることが

多かったためです。

 

コロナで約3年間は調査件数が

下火になっていたこともあり

今後も増加傾向が続くと思います。

 

話しはかりますが今回の調査等の

状況に書かれている内容は

 

毎年行われている統括官会議

という国税庁の税務行政の方針を

各税務署の管理職向けの会議で

 

よく見かけるワードになっている

事業者ばかりです。

 

例年8月上旬くらいに開催されて

いる会議になります。

 

今年も同じような内容で

行われていると思います。

 

 

 

では税理士・行政書士・社会保険労務士

の齋藤幸生でした!!

 

それでは、また!

 

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この記事は、その時の状況、心情で書いています。
また、法令に関しては、その後改正された場合には、
異なる取り扱いになる可能性があります。