【住宅ローン控除と住宅取得等資金の贈与の適用誤り】確定申告書を間違える面倒なことに!?




住宅ローン控除と住宅取得等資金の贈与の適用誤り

平成30年(2019年)12月11日において、

ちょっと信じがたい内容が出てきました。

 

どうやら、住宅ローン控除と住宅取得等資金の贈与に

適用誤りがあり、それを会計検査院が見つけたようなのです。

 

これにより、国税庁内部において間違えた納税者を特定するため

確定申告の見直しを行ったようですね。

 

それによると、平成25年~28年分までの確定申告のうち、

約1万4,500人ついて申告誤りの税制が必要とのこと。

 

申告誤りとなるケースは以下の通り

(国税庁ホームページよ引用)

 

こういった人たちには、税務署から申告誤りについて

修正申告の勧奨(修正申告してください)が

行われると思われます。

 

税理士業界の人たちも確定申告書にミスがあると

大変なことになりますので、気を付けたいと思います。

 

そこで、上記を踏まえて、確定申告書を間違えると

一体どうなるのか?

 

法的な根拠と手続き、住宅ローンと住宅取得資金の贈与制度

以上の4つについておさらいする記事を以下書いていきます!

 

確定申告書を間違える面倒なことに!?

確定申告書の書き方、適用間違いをしてしまうと

一体どうなるのかを見ていきましょう!

 

確定申告書間違った場合の手続き

申告に関する手続き

確定申告書を間違ってしまった場合の手続きは、

次の2つのケースが想定できます。

 

ケース①:確定申告書の記載間違い

ケース②:税法の適用間違い

 

実際の実務においては、課税標準(所得税の課税対象の金額)、

税額(所得税そのもの)に影響があれば修正申告となります。

 

実際の申告書の修正に関する手続きは、

以下のようになっています。

 

国税通則法第19条において修正申告の要件があります。

・税額に不足額があるとき
・純損失等の金額が過大であるとき
・還付金の額の税額が課題であるとき
・納付金額を記載しなかったが、納付金額があるとき

また、いつまでできるのかというと、

国税通則法第24条に規定する更正があるまではとなっています。

 

また粗末な論点ですが、修正申告には効力の範囲が定めて合って、

すでに確定した税額についての納税義務については影響しません。

 

つまり、修正申告を提出する部分に効力を絞っている

ということになるわけです(国税通則法第20条)

 

ですから、間違った確定申告書を提出した場合の手続きの

順番は次のようになります。

 

☆修正申告書を提出する場合

①修正申告書を提出

②納付する

③更正はなくなる

 

☆修正申告書を提出しない

①更正の通知が行われて納付書が届く

②納付する

 

今回の確定申告書の誤りについては、ほとんどの個人は

還付金の額が過大となっている場合に該当すると思います。

 

ですから、修正申告の事案となっていくわけですね!

 

ですから、国税庁の立場とすれば、更正をしても良いけれど、

まずは原則の通り、修正申告をお願いする文書の送達がなされます。

 

これに応じない納税者は更正の通知が行われる

という流れとなっていきますね。

 

因みに、更正を行う場合には、やり方があって

次のようになっています。

 

・税務署長が更正を行うことになる(国税通則法第24条)

・国税庁や国税局の調査でも税務署長が更正を行う(同法27条)

・更正通知書は送達して行う(同法28条)

・更正の効力は他の確定した納税義務に影響しない(同法29条)

・更正の所轄庁は管轄の税務署長となる(同法30条)

 

以上を現実に落とし込むと次のようになります。

事案発生は、会計検査院による指摘で、国税庁が調査して、

約1万4,500人を特定するに至った。

 

まずは、修正申告のお願いで納税者に通知することになるが、

修正申告書を行わない納税者については、所轄の税務署長から

更正通知書が送達されることになる。

 

 

 

納付に関する手続き

実務をやっているとあまり印象がない納付ですが、

今回のような事案においては一体どうなるのでしょうか?

 

まずは、原則通りに修正申告書を提出した場合には、

修正申告書を提出した日が納付期限となります。

(国税通則法第35条2項1号)

 

課税実務をやる上で、上記の規定は重要で、

例えば、税務調査で修正申告書を提出する日と納付日を

合わせておくか、先に納付をしておかないと

後述の延滞税の対象となります。

 

では、更正通知書にて処分された場合の納付期限は、

一体どうなるのかというと・・・

更正通知書が発せられた日の翌日か1ヵ月を経過する日です。

(国税通則法第35条2項2号)

 

それでは、今回の事案で罰金等はかかってしまうのかというと、

結論としてはかかります。

 

根拠は国税通則法第60条にありますね。

納税者は修正申告書を提出し、又は更正を受けた場合において、

国税通則法第35条の規定により納付すべき国税があるとき。

 

このような規定がありますので、当然延滞税はかかります。

ただ、延滞税の計算期間の特例というものがって、

国税通則法第61条に規定があります。

 

それによると、原則は法定納期限から計算することになりますが、

それだと酷なので、修正申告書を提出した日や更正通知書が発せられた日まで

計算期間に含まないことになっています。

 

つまり、今回の事案では、修正申告書であれば、修正申告書を

提出したと同時に納付すれば延滞税はかかりません。

 

更正通知書も発せられた日と同時に納付をすれば、

延滞税はかからないと思います。

 

では、過少申告加算税はかかるのでしょうか?

結論から申し上げるとかかるということになります。

 

これは国税通則法第65条に根拠がありまして、

税率は追徴される税額の10%になりますね。

 

また、同条2項によれば追徴が50万円を超える場合又は、

当初の期限内申告書の税額を超える場合には、

超えた部分については5%が加算されますので、

合わせて15%の過少申告加算税がかかります。

 

結論から申し上げますと、本税の追徴と過少申告加算税は

免れることができない仕組みになっていることが分かりますね。

 

また、住民税についても控除を受けている場合には、

本税の追徴が行われることになります。

 

 

住宅ローン控除と住宅購入資金の贈与のおさらい

それでは、住宅ローンと住宅取得等資金の贈与について

適用関係と計算方法について簡単ではありますが、

おさらいしておきたいと思います。

 

住宅ローン控除

法律上の名前は、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除

という名前となっています。

 

巷で言われる住宅ローン控除のことですね。

これには、概ね次のような適用要件といわれる

要件が存在ますね。

 

次の3つの要件を満たす場合です。

①自分で所有、バリアフリー改修工事などの改修工事をするために
直接必要な借入金等であること

②返済期間が5年以上による借入金であること等

③銀行等からの借入金であること

 

また、住宅ローン控除を受けると居住用財産を譲渡した場合の

譲渡所得の課税の特例と併用はできません。

 

これは何を言っているのかというと、

マイホームを売却した時の3,000万円控除という措置があります。

 

その3,000万円という措置と住宅ローン控除は

併用できないということを言っているわけです。

 

今回の事案では、重複して適用している納税者も

いたようなので、どちらか一方を適用することになります。

 

ですから、25年にて3,000万円控除と住宅ローン控除を

受けている人はかなり大変なことになることが

想像できるわけですね。

 

恐らく、一括で納付することは不可能だと思います。

ですから、分割で支払うことになりますね。

 

 

 

 

 

住宅取得等資金の贈与税の非課税

こちらについては、住宅を購入するために

親御さんから住宅の購入資金の贈与を受けると

贈与税が非課税となる措置ということになります。

 

適用要件は次の通りです。

☆贈与を受ける側の要件(お金をもらう人の要件)

①日本に住んでいる

②直系の親からの贈与

③贈与の年の1月1日において20歳以上

④贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下

⑤贈与税の確定申告期限までに家を建てていること

 

☆購入する住宅側の要件

①取得した家の床面積等が50㎡以上240㎡以下で、半分以上が
居住用で使っていること

②一定の住宅用の家屋等であること

 

今回の事案での間違いは、合計所得金額2,000万円以下という

要件が満たされていないケースがあったようですので、

贈与税の非課税措置は受けられないということになりますね。

 

そして、恐らく相続時精算課課税も適用していないので、

暦年贈与の計算となると思われます。

 

もらった金額について贈与税の修正申告書を提出して

申告自体を行う必要があると思いますね。

 

又は、できるかどうかわかりませんが、

贈与を取りやめて借入ということにして、

 

返済計画を立てて、贈与を自体を取りやめることも

一つの解決策だと思われますね。

 

 

また、計算誤りについても事案としてあったようで

住宅ローン控除と住宅取得等資金の贈与の複合適用の

計算間違いだったようです。

 

これは、住宅ローン控除の計算上では、

住宅取得資金として贈与を受けた部分について、

家屋等の取得金額から差し引く計算となります。

 

計算間違いで問題となった事案では次のようなことが

起こっていたのだと思います。

 

・住宅ローン:4,000万円

・住宅の購入金額:4,500万円

・住宅取得の贈与:1,000万円

 

この場合の計算方法では、

住宅の購入金額4,500万円ー贈与部分1,000万円=3,500万円となり

住宅ローン4,000万円<3,500万円 ∴住宅ローン控除対象金額3,500万円

 

にもかかわらず、4,000万円を住宅ローン控除の対象としていた

ということなのだと思います。

 

こちらの場合には、所得税の修正申告事案となりますので、

金額を修正するだけで済むことになります。

 

贈与税の非課税は適用を受けられることになりますので、

過大な納付を強いられることはありません。

 

今年からの税務署の対応を推測

以上のように、住宅ローン控除関係の間違いを

想定してきたものを見てきましたので、

 

今年からの税務署の方針もある程度見えてきますね。

 

つまり、住宅ローン控除、マイホームの3,000万円控除、

住宅取得等資金の贈与税の非課税の3つは厳しく要件を

見てくるものと推測できます。

 

まあ、原則論としては、納税者側に問題があるわけですが、

確かにわかりにくい申告書であったり、

適用関係が複雑な場合もあります。

 

マイホームの3,000万円控除は前後の年、5年間に渡った

適用関係を考えないといけない場合がありますね。

 

住宅取得等資金の贈与税の非課税についても、

合計所得金額ってどこよ?という感じです。

 

行政側、立法段階での過失がないとはいえませんね。

 

ただ、そうだったとしても、申告納税方式をやっている

税金の最終責任者は納税者ということになります。

 

たとえ、国税庁の無料相談などで税理士に聞きながらやって

間違ったとしてもダメなのです。

 

納付は納税者本人が行わないといけない

ということになっています。

 

今年分の所得税、贈与税の申告については、

十分に気を付けて申告をしていただきたいと思います。

 

 

確定申告書を間違えると大変

今回の事案は、改めて確定申告書を間違えると

大変な目に合うということが分かる事案でした。

 

特に贈与税の非課税が取り消される事案になる

納税者が一定数いるものと思われます。

 

私にとっても気が引き締まる思いがありましたね。

 

やはり資産税は必ず勉強して置くことに

越したことはないと改めて思いました。

 

私は今回の事案の中には、税理士が関与して、

自分でハンコを押した中に間違いがあったものも

あったのではないかと思います。

 

つまり、税理士が申告代理をやって間違った

という場合ですね。

 

この場合には、税倍保険を適用するなどして、

どうにか対応が可能なものもあると思いますね。

 

 

 


編集後記

今日は今月申告のところがあるので、それに着手しようかと

思っていることろです。

 

年末調整関係も出てきているので、師走感がでてきていると

感じています。

 

 

では国際税務の税理士齋藤でした~
それではまた👍

 

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この記事は、その時の状況、心情で書いています。
また、法令に関しては、その後改正された場合には、
異なる取り扱いになる可能性があります。

 

 




ABOUT US
齋藤 幸生税理士・行政書士・経営革新等支援機関・ブロガー
都内税理士事務所にて7年間の勤務後独立。 2017年に税理士として独立後は建設業、フォワーディング業、IT業に特化した税務を行っています。また財務支援として資金繰り支援(会社の資金繰りと資金調達支援)を行っています。行政書士としては建設業許可、利用貨物運送事業の許可業務に特化しております。