【新事業承継税制】メリット・デメリットや弊害を考える!




新事業承継税制のメリット・デメリット

新事業承継税制のメリットは、納税額の猶予を

受けられるということです。

 

贈与税・相続税のどちらでも

猶予を受けられることになります。

 

デメリットももちろんあります。

民法上の遺留分を侵害する可能性です。

 

財産の多くを会社の株式が占めている

といった場合には遺留分対策が必須です。

 

なぜ財産の構成比率の割合が株式だと

遺留分を侵害してしまうのか?というと

 

事業承継税制を受けるのに後継者がいて、

その後継者に会社の株式を集中させることに

なるからです。

 

子どもが何人かいたとすれば

他の子どもたちの遺留分を侵害するのです。

 

従って事業承継税制に関するやり方は、

遺留分侵害の対応を考えることでもあります。

新事業承継税制とは?

事業承継税制全体をおさらい

贈与税

①暦年課税制度

原則:申告期限までに申告納付

特例:納税猶予と免除(事業承継税制)

 

②相続時精算課税制度

原則:申告期限までに申告納付

特例:納税猶予と免除(新事業承継税制)

 

新事業承継税制は相続時精算課税の特例としての

役割を持っていることになります。

 

相続税

相続税についても、納税猶予と免除があります。

違いは、次の通りとなります。

 

①一般措置(従前の事業承継税制)

事前の計画策定等 必要なし
適用期限 なし
対象株式 総株式の最大2/3まで
納税猶予割合 贈与100%、相続80%
承継パターン 後継者1人のみ
雇用確保要件 承継後5年間は平均8割の効用維持
事業継続が困難となった場合 宥恕規定なし
相続時精算課税の適用 通常の通り

 

②特例措置(新事業承継税制)

事前の計画策定等 5年以内の特例承認計画の提出
2023年3月31日まで
適用期限 10年以内の贈与・相続
2027年12月31日までの時限立法
対象株式 全株式
納税猶予割合 贈与・相続に関わらず100%
承継パターン 後継者3人まで認められる
雇用確保要件 弾力化
事業継続が困難となった場合 宥恕規定あり
相続時精算課税の適用 60歳以上の者から20歳以上の者への贈与

 

特例措置のメリットは?

特例措置である新事業承継税制の

メリットは以下の通りです。

 

・株式全部が納税猶予・免除の対象となった
・後継者が3人までOKとなった
・雇用要件が緩和された
・事業継続要件が緩和された
・親族外承継ができるようになった

 

使いやすくなった点としては

全株式の納税猶予ができるということです。

 

親族外であっても相続時精算課税の適用

その後の相続税の納税猶予へという流れが

できることになりました。

 

親族外の人へ株式を譲り渡すときに、

無対価でやるような現実があるのか?

ということはありますが

 

広範囲な事業承継となりましたので

知っておくとよいと思います。

 

特例措置を適用する場合

特例措置を適用する場合ですが

基本的には贈与⇒相続という流れになります。

 

理由としては特例措置は10年間の時限立法で

相続を想定すると2027年までに相続が起こることが

前提となってしまいます。

 

つまり2027年までに今の経営者に死んでもらう

ということになってしまいますので

現実的な方法ではありません。

 

そこで事前の計画策定の特例承継計画を

2023年3月31日までに提出して

 

まずは贈与を行い相続を待つという

スキームとなります。

 

贈与では相続時精算課税を使うことが

よりメリットがある場合があります。

 

なぜかというと暦年贈与で特例措置を受けて

打ち切り事由となると生前贈与加算の適用を

受けられない場合もあり得るからです。

 

そうなると贈与+相続のダブルパンチ課税で

当初の負担税金よりも多くを支払うことになります。

 

相続時精算課税だともし打ち切り事由となっても

最悪贈与時の金額で相続時に持ち戻しとなりますので

 

当初の負担以上の税金を支払う可能性は

まったくないことになります。

 

一部例外が存在しますが

暦年課税と相続時精算課税の有利不利は

慎重に考えることをオススメします。

 

遺留分侵害への対応は?

ではここからは遺留分についてです。

 

遺留分とは

初めに遺留分とは何ぞや?ということです。

 

遺留分とは被相続人の兄弟姉妹以外の

相続人に対して留保された相続財産の割合を言います。

 

被相続人の兄弟姉妹以外の相続人には相続開始

とともに相続財産の一定割合を取得しうる権利が

認められています。

 

亡くなった人の配偶者や子供には

一定の割合まで相続財産をもらう権利が

民法上、認めらているのです。

 

この遺留分に基づいて行われる請求を遺留分減殺請求といって

物件的効力あることになっています。

 

2019年7月1日からは遺留分減殺請求は

遺留分減殺額請求という名称となり

金銭債権の効力が生じる債権となります。

 

 

事業承継VS遺留分

初めでも触れましたが、

事業承継は遺留分との戦いでもあります。

 

2019年7月1日以前までは物件的効力が

生じることになります。

 

現行法令上の事業承継税制を使う場合には

そのまま適用するわけにはいきません。

 

後継者は3人とすることで納税猶予・免除は

受けられるのですがその後の株式が親族間で

分散化してしまうことにもなります。

 

基本的には後継者は1人の方が良いですし

望ましいと言わざるを得ません。

 

そうなるとどうしても遺留分をどうにかする

ということになります。

 

次の方法が現実的には考えられます。

 

・種類株式の発行
⇒無議決権株式を親族へ交付して遺留分に備える

・生命保険の活用
⇒生命保険金を後継者以外の相続人に与えて、
遺留分減殺請求をしないようにする

しかし、死亡保険金は遺贈又は贈与に係る財産には

当たらないという最高裁の判断もあるため、

間接的な効果しかない点に注意が必要。

 

・持株会社の活用
⇒持株会社の株式を後継者持ち、既存会社を
子会社化するスキーム

ただしこれは株式は移せても事業承継税制の

対象とならない。

 

譲渡所得税、法人税も含めた税負担が生じ

持株会社の存続ができるのかどうも検討が

必要となります。

 

・自益信託
⇒後継者を受益者、経営者を指図人件受益者として
自益信託を設定するやり方

 

相続時に受益権を配偶者や子供へ遺贈して

指図権を後継者に集中させるスキームです。

 

これだとやはり事業承継税制は適用できず

相続税の節税効果が期待できない。

 

・民法特例
⇒相続人の合意を得ることは不可能。
現実的でない。

 

以上のことから結論として

種類株式の活用が最も効果的となります。

 

無議決権株式+配当優先の種類株式を

発行するスキームが有効です。

 

以前から信託をすると遺留分の対象財産から

除かれるといううわさがありますが

 

2018年(平成30年)9月12日東京地裁の

判決で信託行為を取り消す判決が出ています。

 

要するに遺留分潜脱目的での公序良俗違反

ということですので注意が必要です。

 

新事業承継の弊害を考える

事業承継税制の弊害(デメリット)

事業承継税制自体のデメリットは

事業承継税制を適用したらずっと適用を

継続しないといけないということです。

 

贈与、相続どちらが始まりでもいいですが

納税猶予⇒本人死亡⇒免除⇒納税猶予開始

 

このような流れがずっと続いてしまう

ということが最大のデメリットになります。

 

また、どこかで打ち切り事由になったときは

どこかで相続税や贈与税の負担が発生します。

 

税金を本人が払えない場合もありえますので

慎重な検討や説明が必要となりますね。

 

新事業承継税制の弊害(デメリット)

新事業承継税制では相続時精算課税を

適用することができます。

 

①相続時精算課税の弊害

受遺者が贈与者より先に亡くなった

という場合にはどうなりますか?

 

そうです権利義務承継が待っています。

つまり自動的に二次相続開始の合図です。

 

権利義務を承継する相続人が負担する

ということになりますので

こちらの説明も必要となります。

 

②親族外承継の弊害

後継者に親族以外の人を選んだ場合には、

当然ながら相続税の申告書に親族以外の

第三者が載ってくることになります。

 

こういった申告書で良いのでしょうか?

こうしたことも説明しておかないと

後々問題となります。

 

相続税については財産で割って

個人分負担の相続税を出す計算です。

 

株式の相続税は免除されますが

それは親族以外の後継者だけです。

 

こういった申告書で相続人が納得するか?

という問題もありますね。

 

非常に難しい説明となると思います。

経営者だけでなく相続人も含めた合意が

親族外承継には必要なのです。

 

事業承継税制はやはり使いずらくないか?

私は結論として事業承継税制はまだ

使いずらいのではないか?と思っています。

 

なぜなら事業承継税制の弊害として

根本的な要素にずっと適用しないといけない。

 

それがずっと個人の自由意思を

奪ってしまうかもしれないのが理由です。

 

一応株価がかなりの高額となる会社へは

案内はだします。

 

将来のことは皆さんで決めてください!

 

というのが私の方針となります。

これはどうしようもありません。

 

将来にわたる問題なので親族でもない

顧問税理士がどうこう言える立場ではない

というのが私の考え方です。

 

もし事業承継税制を使う税理士先生においては

慎重にも慎重に検討をされることをお伝えします。

 

 


編集後記

今日は午前中に訪問予定となります。

年末調整の資料も預かって来る予定です。

 

午後はスポーツジムへ行って自分に活を

入れてきたいと思います!

 

 

では国際税務の税理士齋藤でした~
それではまた👍

 

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この記事は、その時の状況、心情で書いています。
また、法令に関しては、その後改正された場合には、
異なる取り扱いになる可能性があります。

 

 




ABOUT US
齋藤 幸生税理士・行政書士・経営革新等支援機関・ブロガー
都内税理士事務所にて7年間の勤務後独立。 2017年に税理士として独立後は建設業、フォワーディング業、IT業に特化した税務を行っています。また財務支援として資金繰り支援(会社の資金繰りと資金調達支援)を行っています。行政書士としては建設業許可、利用貨物運送事業の許可業務に特化しております。