売掛金の回収不能が貸倒損失になりませんか?




今回は貸倒損失について紹介いたします。

★法人税・所得税上の貸倒損失とは??

①法人税

法人税の流れは、貸倒損失=損失と考えてその回収不能が発生したときの損失として計上することになります。ただし、基本通達9-6-1~3という国税庁の内規により貸倒ができる発生事実が限定されていることから、その発生事実に沿った事実がないと貸倒損失にすることができません。

 

②所得税

所得税の流れも、貸倒損失=損失と考えてその回収不能が発生したときの損失として必要経費に計上することになります。ただし、法令解釈通達51-10~13という国税庁の法令解釈により

貸倒ができる発生事実が限定されていることから、その発生事実に沿った事実がないと貸倒損失にすることができません。

 

★貸倒損失の発生事実とは??

法人税、所得税に発生事実については違いはありませんので、以下にまとめてみます!

なお、税法上で以下の事実以外で貸倒処理を行うと否認されるリスクがございます!

①一部切捨ての場合

-会社更生法等の規定により切り捨てられた金額→要するに破産の事実が必要となります。

 

 

-債権者集会などにより合理的な基準によって切り捨てられた金額

第三者が関与して合理的な算定基準が必要になります。

 

 

-得意先の債務超過の状態が相当期間継続し、弁済を受けることができない場合に、その得意先に

対して書面で明らかにした債務免除額

実務上、一番多い貸し倒れの処理になります。得意先に内容証明を送付後、その内容証明が

    戻ってくるので、戻ってきたことをもって貸し倒れの処理を行います!

 

②全額回収不能の場合

債務者(得意先)の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒処理することができます。

実務上、最も証明が難しい方法です。現実的には以下のように事実を積み上げる方法になります

-手形の不渡りが起きていないかどうか?(2回目)

-帝国データバンクで最低評価(銀行が貸してくれない評価)

-あちこちに借金を頼んでいる

 

 

以上の発生事実を積み重ねていくと回収不能であることが証明できてくるかと思います。

加えて、得意先の貸借対照表や損益計算書が3期分くらいあると立証しやすいと考えます。資産状況と支払能力を説明できるからです!

 

③一定期間取引停止後弁済がない場合等

次の事実が発生した場合には、その債務者に対する売掛債権(貸付金などは含まない)について、その売掛債権の額から備忘価額(1円)を控除した残額を貸し倒れとして損失処理することができます。

 

 

-継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化したため、その債務者との取引を停止した場合において、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき

→この場合は要件を2つに分けることができます。

1.支払能力の観点から取引を停止したこと

2.取引を停止した日と売掛金を最後に回収した日のうち一番後に来る日から1年以上経過

ですから、回収が断続的に行われている場合には貸倒はできないということになります!

 

 

-同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払を督促しても弁済がない場合

→この要件も2つに分けることができます。

1.同一地域のすべての債務者のすべての売掛金総額<取立費用の状態

2.督促しても弁済がない

現実的な例を挙げると、海外の得意先の売掛金でその渡航費用の方が多く、売掛金の回収ができない場合が想定できます。

 

 

私の経験ですと、エジプトに合った得意先の売掛金をこの方法により貸倒処理しました!

ただ、備忘価額の1円を残すことを説明するのが大変でしたが・・・(笑)

 

★税務調査でのポイント!

税務調査では、上記の貸倒損失について経理方法と要件に会っているかどうかについて確認が行われます。実務上、よくあるのが、売掛金の管理を会社様が怠っていて、残高だけを合わせたいがために貸倒損失を使って合わせる方法もあったりします。このような処理でもいいのですが、税法上は、要件がありますので、その要件に合わせた説明と資料の提示を求められます。

 

 

また、会社の方針により一定期間の弁済がない取引先には、債務免除通知を行う場合もあろうかと思います。この場合も要件がありますので、その要件を満たさない場合には寄附金になります。そうすると

個人では寄付金控除の対象となりませんので、必要経費が否認されます。法人では一般寄附金の限度額までが費用として認められ、限度額を超えるときは否認となります。加えて消費税の課税事業者ですと消費税の貸倒による控除が認められなくなります。

 

以上のことから貸倒損失は慎重に処理を行う必要があると考えます!

 

 

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編集後記

 

昨日はMFクラウドの研修に行ってきました!

IT補助金がらみの研修だったので流れと申請結果が聞けて良かったです(^∇^)

後期の申請も50億円の残っていて6/30まで申請が可能なようなので、中小企業庁のHPにて

内容を確認してみてはいかがでしょうか?

 

それから、本ブログに関する予告です!

5/19でこのブログを閉鎖予定です。つきましては、新しいブログへ移行しますので、

新しい
ブログでのブクマをお勧め致します!詳細は5/20に告知予定です(`・ω・´)

 

Liens税理士事務所

http://www.liens-tax.com/

 




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ABOUT US
齋藤 幸生税理士・行政書士・経営革新等支援機関・ブロガー
都内税理士事務所にて7年間の勤務後独立。 2017年に税理士として独立後は建設業、フォワーディング業、IT業に特化した税務を行っています。また財務支援として資金繰り支援(会社の資金繰りと資金調達支援)を行っています。行政書士としては建設業許可、利用貨物運送事業の許可業務に特化しております。