暦年課税の贈与税はなくなるのかを税理士・行政書士が考察

暦年課税の贈与




暦年課税の贈与税はなくなるのかを税理士・行政書士が考察

こんにちは!

 

税理士・行政書士の齋藤幸生です!

 

今回は・・・

贈与税についての考察記事です。

 

それでは、スタートです!!

 

暦年課税の贈与税の問題点とは?

贈与税の問題点は贈与を使うことで

格差の固定化につながりかねないと

自民党の税制改正大綱で指摘されています。

 

現在の暦年課税の贈与税の計算は

次のようになっています。

 

贈与税の計算では

一般贈与と特例贈与の2つに分かれていて

 

一般贈与と特例贈与における税率は

10%~55%で変わりはありません。

 

しかし、税率を乗じたあとの

税控除が一般贈与よりも特例贈与

の方が高くなっています。

 

国税庁が公表している早見表で

確認してみます。

 

一般贈与の場合

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
税控除額 なし 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

 

特例贈与

基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
税控除額 なし 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

 

比較してみると基礎控除後の

課税価格が増えれば増えるほど

税控除額が増えています。

 

恐らく、自民党の税制調査会は

特例贈与について懸念をしている

ということだと思います。

 

特例贈与とは祖父から孫へ

父から子へといった直系間の贈与で

川上から川下への贈与になります。

 

言い換えると親から子への財産を

移動させたときの税負担が

一般の贈与よりも軽減されていると

表現することが可能になります。

 

結果、多くの財産を持っている

経済的な強者が継続してずっと

強者として固定化されるのでは?

 

と自民党の税制調査会は考えている

と推測することができます。

 

もちろん、自民党の税制調査会は

暦年課税の贈与税だけを

問題にしているわけではないです。

 

むしろ、抜本的な見直しの検討を

進めたいと考えています。

 

以下で内容を確認してみます。

 

 

 

今後の贈与税の見通しについて

今般、贈与税の見直しが行われるかも

といった議論が行われています。

 

この議論が行われている契機として

自民党の令和4年税制改正大綱に

次のような文章があるためです。

 

相続税・贈与税のあり方

高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。
高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた経済の活性化が期待される。
一方、相続税・贈与税は、税制が資産の再分配機能を果たす上で重要な役割を担っている。高齢世代の資産が、適切な負担を伴うことなく世代を超えて引き継がれることとなれば、格差の固定化につながりかねない。
このため、資産の再分配機能の確保を図りつつ、資産の早期の世代化に点を促進するための税制を構築していくことが重要である。
わが国では、相続税と贈与税が別個の税体系として存在しており、贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から高い税率が設定されている。このため、将来の相続財産が比較的少ない層にとっては、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある一方で、相当に高額な相続財産を有する層にとっては、財産の分割贈与を通じて相続税の累進負担を回避しながら多額の財産を移転することが可能となっている。
今後、諸外国の制度も参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的にとらえて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。
あわせて、経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置は、限度額の範囲内では家庭内における資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度となっていることから、そのあり方について格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある。

自由民主党 令和4年 税制改正大綱から抜粋

 

書いてある内容を素直に読めば

次のように考えているとまとめる

ことが可能です。

 

①高齢世代に資産が集中しているので、若年世代に資産を移転してもらいたい

②若年世代に資産移転が早期に行われれば経済にも良い影響がでてくる

③贈与税の抑制効果は、資産をあまり持っていない人には効果があるが、資産をたくさん持っている人たちには限定的にしか効果がない

④資産の再分配機能が発揮される税制にしたい、格差の固定化を防止したい

⑤相続税と贈与税を一体的にして課税する観点から今後の税制を見直したい

⑥非課税措置は税負担がないのだから、見直したい

 

 

 

以上のことから今後の贈与税は

見直しがされる可能性が高い

と私は考えています。

 

さらに言えることとしては

昨年、私が所属する東京税理士会では

アンケートがありました。

 

今回の贈与だけではなく

税理士界隈についてのアンケートの

一つのトピックとして

 

相続税と贈与税についての

アンケートもありました。

 

確か回答は任意項目に

なっていたような気がします。

 

なぜ、相続税と贈与税について

アンケートで意見を書かせるのかな?

と不思議に思っていたところ

 

令和4年の税制改正大綱が公表され

納得がいきました。

 

理想的な財産課税とは?

では、理想的な財産課税とはどんな

制度になるのかになります。

 

財産課税は最終的に相続が起こり

相続税で精算されることになります。

 

しかし贈与ができる制度があることで

適正な相続税を計算することができない

という問題点があります。

 

結果として相続税と贈与税を一体的に

計算して税負担を行ってもらう

という方式が理想的な制度になるわけです。

 

例えば、暦年課税の贈与では

生前贈与加算という制度があります。

 

これは、相続開始3年以内の贈与を

相続税に加えるシステムですが

3年を超えた前の贈与には適用されません。

 

言い換えると贈与が起こってから3年超

経過した資産が相続税の課税漏れを起こす

ということになります。

 

相続税と贈与税を一体化するのであれば

民法の持ち戻しのような制度を新設して

いつの贈与であっても相続税に加える

といった制度にする必要はあります。

 

次のことは私見になりますが

現行の相続税の計算方式は実態を

反映した税負担の計算になっていない

と私は考えています。

 

ざっくりとした相続税の税額の計算は

①(全部の財産ー基礎控除)×税率

②①×その人ごとの財産の価格÷全部の財産

ということになっています。

 

現行の計算方式の問題点は

①相続時の財産が多ければ多いほど税率が高くなり相続税も多くなる
→贈与の抑制効果が期待できない可能性が高まる

②全体に対する税額を相続した資産の金額の割合で負担することになる
→相続人ごとに税負担が異なってしまう

③相続した資産に対して本当に適正な税負担になっているのかわからない
→取得資産に対する税の負担能力が表現されているか不明

④税務調査で申告漏れが指摘され、修正申告があった時に相続した全員に追加の相続税の負担が起こる
→相続人が一番困ってしまう

 

以上の問題点を指摘すると

次のような議論も起こるわけです。

 

相続した人ごとに相続税の計算を

してはいかがでしょうか?

ということになります。

 

イメージとしては遺産取得税方式のような

制度にするわけですね。

 

こうすることで相続人が取得した

資産ごとに課税が行われるので

資産の取得による公平な課税が実現

できると期待はできます。

 

 


編集後記

今回の議論は以前からされていて

立ち上がっては消えの繰り返しに

なっているようです。

 

ただ、相続税の申告をやってみると

本当に現行の税制で問題ないのかな?

と疑問にはなってきます。

 

日本はすでに遺産を分割することが

当たり前になっていますので

相続税と贈与税が現在の状況にあった

方式になるとよいと思います。

 

 

では税理士・行政書士の齋藤幸生でした!!

それでは、また!

 

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この記事は、その時の状況、心情で書いています。
また、法令に関しては、その後改正された場合には、
異なる取り扱いになる可能性があります。

 

 




ABOUT US
齋藤 幸生税理士・行政書士・経営革新等支援機関・ブロガー
都内税理士事務所にて7年間の勤務後独立。 2017年に税理士として独立後は建設業、フォワーディング業、IT業に特化した税務を行っています。また財務支援として資金繰り支援(会社の資金繰りと資金調達支援)を行っています。行政書士としては建設業許可、利用貨物運送事業の許可業務に特化しております。