個人事業の事業承継税制の創設
平成31年の税制改正により、
個人版事業承継税制が創設されました。
適用を受けられる人
・青色申告(正規の簿記の原則に限る)
・事業(不動産貸付業等を除く)
・上記の個人事業主の後継者(注1)
(注1)平成31年4月1日ー平成36年3月31日までに
個人事業承継計画を都道府県知事に提出し確認を
受けたものに限ります。
適用を受けるための要件
・後継者が中小企業における円滑化法の認定を受ける
・平成31年1月1日ー平成40年12月31日(注2)までの間に
・贈与又は相続により、特定事業用資産を取得すること
(注2)上記の期間内で、先代事業者からの贈与・相続等
の日から1年を経過する日までにされたものに限ります。
特定事業用資産とは?
特定事業用資産とは、次の資産で、先代経営者の事業に
使われていた資産です。
また、その使われていた資産は、贈与又は相続用の年の
前年分の事業所得の青色申告書の貸借対象表に計上されていた
ものになります。
①宅地等(400㎡まで)
②建物(床面積800㎡まで)
③②以外の減価償却資産で次のもの
・固定資産税の課税対象となっているもの
・自動車税、軽自動車税の営業用の標準税率が適用されているもの
・その他一定のもの
個人版事業承継税制の効果は?
・特定資産の贈与税や相続税の全額の納付が猶予
・納税猶予されている贈与税や相続税の納税が免除
まあ、結論としては、色々な要件をクリアーすれば、
贈与税や相続税の納付が猶予され、免除され
ということになるわけです。
現在、存在する、企業版の新事業承継税制を
個人事業主に再編したような税制となっているので、
基本的には贈与から適用を受けていって、
贈与税の免除⇒相続税の猶予という流れに
なっていくことになります。
それでは、税目別に確認をしていきます。
スタートです!!
贈与税の納税猶予と免除
贈与税の納税猶予と免除の大まかな流れ
STEP1
個人事業承継計画の作成・提出・確認
まずは、個人事業承継計画を作ります。
これは、認定経営革新等支援機関の所見が必要です。
認定経営革新等支援機関は多くの税理士が
なっていますので、税理士と相談の上、作ります。
これを作っていって、平成36年3月31日までに
都道府県知事に提出して、確認を受けます。
STEP2
贈与を行います。
ただ、先代事業者から引き継ぐ後継者が
贈与を受けることになります。
この贈与は、特定事業用資産のすべての贈与を
受けることになっています。
したがって、先代経営者は贈与する年に、
事業を廃業することになります。
STEP3
贈与税の申告期限までの間に次のことを
しておくことになります。
・円滑法の認定
後継者、先代事業者の要件を満たしている
ことについて、都道府県知事の円滑化法の認定を
受ける必要があります。
・後継者の所得税の手続き
事業承継後、開業届出書を提出、青色申告の承認を受け、
贈与税の申告期限までに、贈与税の申告書と一定書類を
税務署へ提出して、一定の担保を提供することになります。
後継者と先代事業者の要件
1 後継者の要件
①贈与の日において20歳以上
平成34年4月1日以降は18歳以上となります。
②円滑化法の認定を受けいている
③贈与の日まで引き続き3年以上にわたり、
特定事業用資産の事業(同種・類似の事業等を含む)に
従事していたこと
④贈与税の申告期限までに開業届出書を提出し、
青色申告の承認を受けていること
⑤特定事業用資産の事業が、資産管理事業や性風俗
関連特殊営業に該当しないこと
2 先代事業者の要件
(1)贈与者が先代事業者の場合
①廃業届出書を提出していること又は
贈与税の申告期限までに提出する見込みであること
②贈与の日の年、その前年及びその前前年の
確定申告書を青色申告により提出していること
(2)贈与者が先代事業者以外の場合
①先代事業者の贈与又は相続開始の直前において、
先代経営者と生計を一にする親族であること
②先代経営者からの贈与又は相続後に特定事業用資産の
贈与をしていること
こちらの贈与は、先代経営者からの贈与又は相続開始の日から
1年を経過する日までの贈与に限ります。
こちらの贈与の意味は、個人版事業承継税制を2回
受けることになった場合です。
贈与税の申告期限後(納税猶予期間中)
申告後も引き続き、贈与された事業用資産を
保有すること等により、贈与税の納税猶予が
継続されることになります。
この期間中に以下の事由に該当すると贈与税を
納付と利子税という利息を納税することになります。
・事業を廃止した場合(宥恕規定あり)
・資産管理事業又は性風俗特殊営業に該当した場合
・事業用資産の事業について、事業所得がゼロに
なった場合
・青色申告の承認を取り消された場合
・3年ごとに、継続届出書を提出しない場合
贈与税の免除とき
贈与税の免除のときとは、
先代経営者等の死亡等の時になります。
先代事業者等の死亡等があった場合には、
免除届出書・免除申請書を提出することにより、
納税が猶予されている贈与税の全部又は一部について
その納付が免除されることになります。
その後、相続の手続きとなって、相続税の課税対象と
なることになります。
相続税の納税猶予と免除を受ける場合
贈与から相続に移行することで、
特定事業用資産が相続税の対象となります。
この時に、相続税の納税猶予と免除を受ける場合には、
以下の手続きが必要となります。
相続開始時
都道府県知事の円滑化法の確認を受け、
一定の要件を満たす場合には、
特定事業用資産について、個人の事業用資産についての
相続税の納税猶予及び免除の適用を受けることができます。
相続税の申告期限まで
都道府県知事の円滑化法の確認を行います。
そのあとに、相続税の申告書に、
相続税の納税猶予を受ける旨を記載して、
一定の書類を税務署へ申告書一緒に提出します。
また、この時にも、猶予される納税額等に見合う
担保を提供することになります。
まとめとして
要するに、制度として知ってほしいことは、
いきなり、納付税額が免除にはなりません。
必ず、猶予⇒免除という流れとなります。
ですから、猶予が前提での免除となります。
相続税の納税猶予と免除
それでは、こちらは、相続から入った場合の
納税猶予の手続きを解説していきます。
通常は、こちらから納税猶予を受けることは
現実としては難しいです。
なぜなら、平成40年12月31日までに、先代事業者が
死亡してくれないと、適用を受けることができないからです。
現実的なことではありませんが、
もし・・・ということで解説していきます!
相続税の納税猶予の大まかな流れ
STEP1
個人事業承継計画の策定・提出・確認
後継者は、個人事業計画を作ります。
こちらは、贈与税と一緒です。
認定支援機関となっている税理士がいますので、
その税理士と一緒に作って、都道府県知事へ提出しましょう!
提出期限は、平成36年3月31日までに提出して
確認を受けることになります。
STEP2
相続開始後に後継者、先代事業者の要件を
満たしていることについて、
都道府県知事の円滑化法の認定を受けることになります。
因みに、認定は、相続税の申告期限までに
受けることになります。
相続税の申告期限は、相続開始から10か月です。
(2019年4月28日現在)
実務上の問題点として、認定が10か月で
受けられるのかどうかという問題があります。
また、平成40年12年31日までに先代事業者が
死亡してくれないと、計画書を提出していても
相続税の納税猶予及び免除の適用を受けることが
できないことになります。
STEP3
相続税の申告期限までの間の手続きは
次のようになります。
・一定の期限までに開業届出書を提出
(相続開始があった日により、期限が異なります。)
・青色申告の承認を受ける
・納税猶予と免除を受ける旨を記載した相続税の申告書
と一定の書類を税務署へ提出
・一定の担保を提供します。
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後継者と先代事業者の要件
後継者の要件
①円滑化法の認定を受けていること
②相続開始の直前に特定事業用資産の事業
(同種・類似の事業を含む)に従事していたこと
(先代事業者が60歳未満で死亡した場合を除く)
③相続税の申告期限において、開業届出書を提出し、
青色申告の承認を受けていること(見込みも含む)
④特定事業用資産の事業が資産管理事業及び
性風俗特殊営業に該当しないこと
⑤先代事業者等から相続等により財産を取得した者が、
特定事業用土地等について、小規模宅地等の特例の
適用を受けていないこと
(こちらは、後述します)
先代経営者等の要件
(1)被相続人が先代経営者である場合
相続開始の日の年、その前年及びその前前年の
確定申告書を青色申告書により提出していること
(2)被相続人が先代事業者以外の場合
①先代事業者の相続開始又は贈与の直前において、
先代事業者と生計を一にする親族であること
②先代事業者からの贈与又は相続後に開始した相続の
被相続人であること
(こちらは、納税猶予及び免除で2回目に受ける場合です)
相続税の申告期限後(納税猶予期間中)
相続税の申告期限後に、以下の事由があると
猶予されていた相続税と利子税を納付する
ことになります。
・事業を廃止した場合
・資産管理事業又は性風俗特殊営業に該当した場合
・特定事業用資産の事業の事象所得がゼロとなった場合
・青色申告の承認が取り消された場合
・青色申告の承認の申請が却下された場合
・3年ごとに継続届出書を提出しなかった場合
相続税の免除となるとき
相続税の猶予及び免除を受けた後に、
次の事由が生じた場合には、
猶予されている相続税が免除されます。
後継者の死亡等があった場合
この場合には、免除届出書・免除申請書を
提出することにより、免除となります。
それ以外の免除自由
・初めて相続税の納税猶予及び免除を受けた
相続税の申告期限の翌日から5年を経過する日後に
贈与税の納税猶予及び免除の適用を受ける贈与を
行った場合
・事業を継続することについて、やむを得ない
理由がある場合(宥恕規定)
・破産手続き開始の決定などがあった場合
・事業の継続が困難な一定の事由が生じた場合で、
特定事業用資産のすべての譲渡・事業を廃止をしたとき
小規模宅地等の特例との関係
それでは、小規模宅地等の特例との関係を
見ていきたいと思います。
小規模宅地等の特例の概要
小規模宅地等の特例とは、相続時に、
事業用や居住用の土地があった場合に、
相続税法上の土地の金額を20%にしてしまう
特別な措置です。
従って、1億円の相続税評価の土地があった場合には、
2,000万円まで価値を減額して申告することができます。
個人版事業承継税制との関係
個人版事業承継税制を受ける場合には、
事業用の土地については、小規模宅地等の特例を
適用することができなくなります。
ですから、特例事業用資産のうちに事業用の土地が
存在する場合には、納税猶予及び免除の適用を
受けるのが良いのか、
小規模宅地等の特例を受けるのが良いのかを
検討することになりますね。
実務上の問題点
実務上の問題点としては、親族以外にも
事業を承継することができる一方で、
もし、親族以外に事業を承継させた場合には、
最終的に相続税の申告書を書くことになるので、
その中に、親族以外の人の名前が出てきます。
加えて、その時に、親族以外の人に、
相続税の申告書を渡すことになるので、
財産状況を見られたり、親族の情報が
バレることになりますね。
また、適用できる期間が決まっています。
平成40年12月31日までとなっていることです。
従って、贈与からの適用が現実的な点です。
ただ、先代事業者の廃業が前提なので、
先代事業者の同意が得られるのかが問題です。
不謹慎なようですが、事業承継計画を
平成36年3月31日までに提出しておいて、
平成40年12月31日までに先代事業者が
亡くなってくれれば、相続税の適用を受けることが
できますが・・・
もし、そうでない場合には、適用を受けることが
できなくなりますね。
ですから、平成40年12月31日までに先代事業者には
廃業を選択してもらうことになります。
あと9年のうちに廃業してくれ!
という依頼を後継者からしないといけない
という問題になるわけですね。
加えて、事業承継税制の最大の問題としては、
猶予⇒免除のループが発生するので、
事業をずっとやり続けないといけないことに
なるわけです。
贈与⇒相続⇒贈与・・・・
このループがずっと続くことになります。
本当にそれでよいのか?
こんな問題も出てきますね。
編集後記
今日は、届いたCDラックの組み立てを
やろうかなあと思っています。
まだ、段ボールに入ったCDが多数あるので、
整理をしたいわけです。
ではぼっち税理士の齋藤でした~
それではまた👍
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