【国際税務と語学との関連性】国際税務というふわっとしたものが誤解を生んでしまう・・・




国際税務と語学との関連性

先日、次のような質問がありました。

 

恐らく質問者様は、国際税務=英語が必要

と思われたのだと思います。

 

この思考となる原因としては、

国際税務というふわっとした言葉に

原因があるではないかと思います。

 

過去にも何度か記事を書いたことがありますが、

国際税務について、どのようなことをやっていて、

語学がどのように必要となるのか?

 

ということを中心に、記事を書いていって、

世の中国際税務への理解の助けになることが

できればと思っています。

 

それでは、スタートです!!

 

国際税務とは?

最初は、国際税務とは何ぞや?

これについて知って頂きたいと思います。

 

国際税務とは、日本と海外との取引について、

日本国内の実体法の適用をすることです。

 

また、実体法の例外としては、

条約がありますので、

 

国際税務では、各国との個別の租税条約や

OECDモデル租税条約の適用を行います。

 

では、実体法とは何か?

実体法とは、所得税、法人税、消費税、相続税・贈与税、

住民税、事業税などの一般的な租税の法律となります。

 

ですから、国際税務の本質は、

日本国内の法律を適用させることなのです。

 

また、国際税務には、2つの関与が考えられます。

 

①アウトバウンド(海外進出)

②インバウンド(日本進出)

 

ということになるわけです。

 

一般的には、海外進出する場合には、

日本の税理士が関与するスキマはほとんどないと

考えられます。

 

理由は、日本以外の租税の法律は、

現地のコーディネイターでないと対応できないからです。

 

例えば、日本の会社が中国へ進出したとして、

日本の税理士が出る幕はあると思いますか?

 

出る幕は通常あり得ません。

 

ある程度の規模の税理士法人などが、

海外へ進出している場合には、

 

その税理士法人等がグループ内で関与する

ということはあり得ると思います。

 

例えば、ビック4といわれるような事務所だと

各国に支店やパートナーが多くいますので、

関与がスムーズに行くことになりますね。

 

逆に、インバウンドとなると、日本の租税の法律へ

対応することになります。

 

したがって、税理士の出番ということになるわけです。

 

まとめると、

国際税務は、日本と海外との取引について

日本の租税の法律を適用すること。

また、租税条約の適用を行うこと。

 

以上のように説明できると思います。

 

 

語学が必要な場合とは?

それでは、国際税務の現場にて、

語学が必要となる場合とは、

一体どのような場合なのでしょうか?

 

2つの場合が想定できますね。

 

・親会社等から日本の租税について説明を求められた場合

・海外の資料を読む場合

 

以上の2つの場合が想定できます。

 

説明の現場における語学

まずは、説明関係です。

 

親会社から説明を求められた場合には、

日本語は通じません。

 

日本語以外の語学が必要となります。

ですから、英語だけが必要なのではありません。

 

英語、韓国語、広東語、標準中国語、フランス語、

スペイン語、ポルトガル語など世界中のありとあらゆる

言語が必要ということになります。

 

これらの言葉を話さないといけない場合がある

ということになりますね。

 

ですから、国際税務と語学の関連性は、

現場対応では出てきますが、

 

国際税務そのものに必要ということではありません。

求められたときに必要ということなのです。

 

私の対応は、日本語のみということで

やっています。

 

英語は本当に少しだけしか話せませんので、

相手に誤解を与えないように、

 

基本的に話すことはしません。

英語以外の言語についても同様です。

 

 

 

 

海外の資料における語学

海外の資料を読む場合も同様になります。

読めないと処理ができない場合がありますね。

 

私が対応する場合に、直面している資料は、

英文、広東語、韓国語のメール

 

英語の総勘定元帳、請求書、レシートなどの

原始資料などですね。

 

細かく申し上げると、上記以外もあるには

あるのですが、毎月対応するものを挙げると、

以上のものが多いように思います。

 

ですから、読めないとどうしようもありませんので、

英語以外の言語中心に翻訳機に依存することになります。

 

英語も、読んでいて解釈があっているよね?

と不安になったりする場合がありますので、

念のため、翻訳する場合もあります。

 

後は、現地法人の担当者へキチンと説明して、

わかって頂くことで、親会社へ説明をしてもらっています。

 

ただ、国際税務だけで事業をやろうとすると、

言語は話せるほうが良いと思いますね。

 

働き方を度外視して、ただ売上を上げたいのであれば、

中国語と英語は必須のような感じがしますね。

 

 

国際税務の実務はどんな感じ?

それでは、国際税務の実務は一体どのような

感じでやっているのか?ということです。

 

私は、物流と貿易業を中心に、国際税務に

関与をしています。

 

ですから、基本的には法人税、所得税、消費税を

中心に関与している状態です。

 

内国法人への関与とそんなに変わらないと

思いますね。

法人税での関与は?

私が関与していて、頻繁に出くわすのが、

移転価格ですね。

 

親会社と子会社との取引があるので、

値段大丈夫かなあ?というものです。

 

国税庁へ事前相談をした案件は一度もありませんが、

おかしな金額でなければ、今のところ、

税務調査で踏み込まれることはないので、

説明できる状態にしている程度です。

 

ただ、昨今、年商100億円くらいの会社まで

移転価格調査が始まっているようなので、

 

近い将来、移転価格だけの調査を受ける日が

来ると確信しています。

 

私の顧問先には、多国籍企業があるので、

親会社の移転価格ポリシーにて、説明するしか

現在のところは対応ができていないわけです。

 

後は、外国税額控除も時々見かけることがあります。

ただ、外国税額控除を適用して、損金不算入にするか、

外国税額控除をしないで損金にするのか

どちらかの有利不利の選択をすることになります。

 

なぜこのようなことが起こるのかというと、

外国税額控除を受けるタイミングと

国外所得が計上されるタイミングが異なるからです。

 

例えば、当期に支払った外国税額を当期だけで

控除できない場合には、翌年にも繰越できますが、

 

翌期以降の3年間で国外所得がないことになると、

外国税額控除したもののうち、繰越部分は、

損金不算入にした分だけ、税金の対象となるので、

余計な税金を支払うことになります。

 

また、住民税では、外国税額控除はないので、

基本的に損金になるわけですが、

 

法人税割の計算上は、損金不算入にした分だけ

法人税割の納付額が多くなります。

 

この点も検討しておかないと、

やっぱりやらない方が良いのでは?

ということになりかねません。

 

消費税について

消費税については、輸出入の取引と

国外の資産の譲渡等といったことが

メインの取扱いとなります。

 

申告のイメージを申し上げると、

還付申告のイメージとなるわけです。

 

還付申告の場合には、還付申告の明細が必要に

なってみたりしますし、

 

場合によっては、取引の内容説明を求めらたり、

売上、仕入の請求書、契約書などの原始資料の

提出を求めらることが頻発します。

 

また、物流だけで見ると、EMSによる輸出免税の

適用可否も考えないといけません。

 

加えて、勘違いする場合の多い消費税の定義として、

課税資産の譲渡等の範囲に、国外の資産の譲渡等が

入ってくるということですね。

 

ですから、国外の資産の譲渡等に関する

国内の仕入れや経費のうち、消費税の対象となれば、

課税対応仕入として処理を行うことになりますね。

 

この辺は、やり慣れていないと税理士でも

間違えてしまう傾向があると思います。

 

後は、課税期間の短縮も頻繁にあります。

なぜなら、還付申告が前提だからです。

 

これが、設立初年度だと、課税期間を誤りやすいので、

特に気を付けたいところだと思います。

 

それとトリッキーな経理方法としては、

税抜・税込の混合処理をしている関与先もあります。

このようなやり方をしないと消費税の申告書を

作成できないこともありますね。

 

所得税について

こちらは、主に源泉所得税が中心です。

国外へ支払う時に、源泉所得税がかかるのか

否かという点が争点になりますね。

 

特にIT業で気を付けたいポイントは、

著作物に該当するのかどうかということですね。

 

これに該当すると、源泉所得税の対象となります。

著作権法などを確認しながらやりますが、

 

正直、色々なパターンが存在しますので、

個別的に検討するしかないのが現状です。

 

どうしようも無い場合には、

最終的に税務署へ聞きに行くこともします。

 

大体、100万円を超えるような取引から

税務調査でいちゃもんを付けられて、

 

1,000万円を超えると、何が何でも

源泉所得税を徴収していこうとします。

 

実務的には、対応を間違えると、

税賠保険では対応できない金額となりますので、

慎重にしたいところですね。

 

 

外国人従業員への対応もある

国際税務をやっていると

従業員が外国人ということはよくあります。

 

VISA申請に、合計表や個人住民税の課税証明書が

必要だったり、

 

VISA申請で月20万円以上の給料が必要なのだとか

最近は15万円くらいからでも大丈夫だとか

色々情報が交錯することがありますね。

 

また、VISAを申請する行政書士の先生が

税務的なことが分からずに、

 

投資経営VISA取得あたり、資本金が500万円以上必要なので、

VISA申請で500万円の証明書が必要ということで、

 

法人設立登記で、500万円のお金がないのに、

証明書を500万円でつくって登記をしてしまった法人の

対応をすることになったことがあります。

(最悪、役員貸付金が役員賞与に認定される場合もあります。)

 

証明書自体が嘘ですから、その嘘を取り繕うために、

税務上だと、役員貸付金にしなければならなくなった

なんていうのが流行ったことがありましたね。

 

まあ、会社設立するのは本人の意思だし、

それ自体は良いのですが、

 

もうちょっとやる前に、なんかやり方あったべ

とツッコミを入れたいときもありますね。

 

また、外国人の雇用に関する相談もされますね。

社長も外国人なのですが、外国人を雇用するときに

注意する点はありますか?といったことです。

 

外国人登録証は必ずコピーしてくれとか

色々アドバイスはしますね。

 

私の担当ではありませんでしたが、

過って不法就労の外国人を雇ってしまった会社も

過去にありましたね。

 

オーバーステイで、身柄拘束された時に、本人が

VISAの更新を忘れていたと言い訳をしたようですが。

 

近年だと年末調整が面倒なことになることが

多いと思います。

 

家族関係証明書、送金証明書などが必要なので

日本語翻訳したものを作成してもらったり、

 

本国に銀行が無くて、現実的な対応をしたりなど、

ちょっと難しい対応を検討しないといけない場合も

多くなってきたと思います。

 

 

 


編集後記

今日はオフなのですが、確定申告の資料返却などを

行うことになります。

こうした日にやらないとできなくなってしまうからです。

 

昨日、創立20周年を超えた関与先の食事会に

招かれて、食事をしました。

久々に美味しい懐石料理を食べることができました!

 

 

ではぼっち税理士の齋藤でした~
それではまた👍

 

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この記事は、その時の状況、心情で書いています。
また、法令に関しては、その後改正された場合には、
異なる取り扱いになる可能性があります。

 

 




ABOUT US
齋藤 幸生税理士・行政書士・経営革新等支援機関・ブロガー
都内税理士事務所にて7年間の勤務後独立。 2017年に税理士として独立後は建設業、フォワーディング業、IT業に特化した税務を行っています。また財務支援として資金繰り支援(会社の資金繰りと資金調達支援)を行っています。行政書士としては建設業許可、利用貨物運送事業の許可業務に特化しております。