【専門家のリスクという言葉】リスクと説明責任の違いとは?




専門家のリスクという言葉

先日、説明責任がされていないなあと

感じることがありました。

 

確定申告の資料を預かるときに、

前の税理士事務所の職員さんから、

 

青色申告の65万円控除を適用したいのだけれど

と伝えたところ、なぜかリスクがあるのでやめた方が良いと

説明されたということです。

 

確かに、その職員さんのリスクがあるという説明は、

間違ってはいませんでしたが、

 

順序だてて、説明を行っているわけでは

ありませんでした。

 

ここで、感じたことは、リスクという言葉の

不明瞭さと専門家がリスクと使うと説明を果たした

ような感じがすることでした。

 

リスクというと、危ないことという風に思いがちです。

しかし、投資の世界では良い意味、悪い意味の両方で

使う言葉でもありますね。

 

今回は、専門家が使うリスクという言葉の問題点を

浮き彫りにして、説明責任とは何のかを考えようと

思います。

 

リスクという言葉の不明瞭さ

リスクの説明ってありますか?

私が、直面した青色申告の65万円控除から、

リスクという言葉には不明瞭な部分があるなあと、

感じた一方、

 

リスクという言葉のマジックがあるなあと

同時に感じました。

 

専門家がリスクがある!

というと、なんか自分が危ないことをやっていると

普通の人は思うかもしれません。

 

ですから、専門家のリスクということを鵜呑みにする

ということが起こると思います。

 

しかし、よくよく考えてみると、

リスクって、一体の何のリスクがあるのか?

どの程度リスクがあるのかの説明がされる

ということはあまりないように思います。

リスクという説明で逃げないで!

先ほどの、65万円控除の例では、次のような

不動産収入の方へのリスクという言葉でした。

 

給料は年収1,000万円超で、マンションの貸室2件、

これで、不動産の65万円控除を受けることができますか?

という質問をしたとのこと。

 

まあ、ほとんどの税理士であれば、無理!

その一言で完了する亊れだと思いますね。

 

私もそう思いました。

ところが、この方の担当者はリスクがあるという

説明を繰り返すばかりだったようです。

 

それで思ったことが、適用できないことを説明する

ということを恐れているのではないかということです。

 

リスクという分かるけど、ちょっと意味が分からない言葉で

濁して、逃げていると感じましたね。

 

これでは、専門家としての説明責任を果たしていない

と思うわけです。

 

では、どうやったら、説明責任を果たせるのか?

それは、物事整理して説明することだと思います。

 

 

物事を整理して説明する

先ほどの事例ですが、なぜ、65万円控除を受けたい

という考えに至ったのかということですね。

そこから、質問をしてみることに私はしました。

 

上記の依頼があったのは、社長自身ではなく、

その会社の経理・総務・人事をまとめている

担当者からだったのですが、

 

自分は不動産投資をしていて、税務署に確認したところ、

65万円控除を受けることができるという回答を受けた

ということで、

 

社長でも受けることができるのではないかと

思ったとのこと。

 

その担当者の状況を聞いたところ、

全部で8室を賃貸しているということでした。

 

それで、5棟10室の基準を持ち出して、かつ、

帳簿を付けなければならないこと、

 

そうすると税理士報酬が上がってしまうことで

あまりメリットがなく、65万円の適用も受けることが

できないことを説明しました。

 

 

 

 

 

特に専門家としては、難しくない説明だと

思いますね。

 

なれている人であれば、簡単に説明することできて、

全く問題なく、相手も了解してくれることだと思います。

 

ちょっと難しいのは、相手がなぜ適用できると思ったのか

その原因を探ることが難しいと思いますが。

 

先ほどのリスクという言葉で、説明しようとすると

かなりの無理があります。

 

というのは、リスクと言ってしまうと、

さも65万円控除を適用できるけど、

 

税務調査で否認される可能性があるように

感じさせてしまうからです。

 

ここら辺が、税理士業の難しいところですが、

リスクとと言えば説明がされたと思っているようでは、

ちょっと説明ができていないなあと思います。

 

法律は個別具体的に適用すべきものですから、

色々な状況が考えられます。

 

しかし、法律家という専門家としての一般論もあります。

それをどのように表現できるのかという問題だと

思うわけです。

 

それが、物事を整理して説明することでは

ないのかなあと思うのです。

 

 

専門家に必要な説明責任とは?

専門家はどっちの味方か?

さて、それでは、専門家に必要な説明責任とは

一体何のかということになりますね。

 

法律には、白、黒、といったできる、できないの他に

グレーという不明瞭な部分が存在しますね。

 

なぜかというと、法律ではカバーできないことが

現実では起こること、行政側と個人側でどちらに

重きを置くのかで変わることが原因だと思います。

 

ここに対して、いわゆる法律の専門家たちは、

当然、依頼者である個人の味方になるわけですが、

 

同時に、専門家としては行政がどのように出てくるのか

ということが分からないので、不安という場面もありますね。

 

こうした場合に、リスクという言葉が登場して、

その説明をするのだと思います。

 

では、どのようなリスクがあって、行政側の考えを

説明すれば専門家の説明責任は果たされるのかというと

残念ながら、果たせていないなあと思います。

 

なぜかというと、それって本当に依頼者の側について

いるのですか?ということです。

 

グレーな法律の適用では、確かに迷う場面が

少なからずあり、専門家と言えども困ることがありますね。

 

ですから、リスクという言葉を使って、内容を説明して

判断を依頼者へ任せたいと思うのでしょう。

最適な判断をしてもらうために

確かに、間違ってはいませんが、

私が思う説明責任とは、依頼者がどのように思っているのか

という意思を尊重して、できるできないの評価をすること

これが、専門家としての説明責任ではないかと思います。

 

例えば、先ほどの事例の65万円控除ですが、

行政側では5棟10室という表現がありますが、

 

では、7室だとダメなんでしょうか?

3棟だと適用できないのか?

とったケースがグレーだと思うわけです。

 

また、他の収入がどうなっているのかの兼ね合いも

あるかもしれませんね。

 

このように、グレーだとかなり迷う判断となります。

 

果たして、実際にはどれが正しいのか分かりません。

先ほどの2室の収入でも、売上が1億円だったとしたら

どうでしょうか?

 

本当に、5棟10室基準だけで考えて良いのか

という問題になりますね。

 

こういったことにどのやって対応するのか、

その説明をどのように行うのかという場面で、

 

リスクだけの説明では、ちょっと不十分ではないかと

私は思っているわけです。

 

リスクって便利な言葉だよね?

さて、リスクと説明責任について考えてきましたが、

改めて、リスクという言葉は便利な言葉だと思います。

 

投資にはリスクがある、還付申告にはリスクがあるなど、

なんか危ないことを予期させる魔法にかかったように

感じる言葉だと思います。

 

よく分からないのに、分かったような気になる

それがリスクという言葉です。

 

便利なので、頻繁に使ってしまう専門家も多いように

見受けられます。

 

テレビでもリスクという言葉が現役で使われて、

情報系番組では、心筋梗塞のリスクが高まるなどの

表現で使われることが多いように思います。

 

しかし、リスクという言葉には、頻度と効果の両方の

意味があると思います。

 

頻度とは、どれくらいでなるのか、やってくるのか

というリスクということです。

効果は、何かができなかったときに被る被害です。

 

依頼者としては、上記をもとに判断することになり、

それをどうやって伝えるのかが専門家の上での見せ所。

 

リスクという便利な言葉を多用していると、

本質的なところが置き去りにされてしまうので、

私も気を付けたいと思っています。

 

 


編集後記

今日は、午後から顧問先へ訪問となります。

年末調整資料をいい加減返さねばなりません。

 

昨日はちょっとボーカル録音ができませんでした。

今週中に何とか録音して仕上げたいと思います。

 

 

ではぼっち税理士の齋藤でした~
それではまた👍

 

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この記事は、その時の状況、心情で書いています。
また、法令に関しては、その後改正された場合には、
異なる取り扱いになる可能性があります。

 

 




ABOUT US
齋藤 幸生税理士・行政書士・経営革新等支援機関・ブロガー
都内税理士事務所にて7年間の勤務後独立。 2017年に税理士として独立後は建設業、フォワーディング業、IT業に特化した税務を行っています。また財務支援として資金繰り支援(会社の資金繰りと資金調達支援)を行っています。行政書士としては建設業許可、利用貨物運送事業の許可業務に特化しております。