今回は役員賞与を決算対策に使えるかどうかということを検証したいと思います。
★役員賞与とは?
役員賞与は、法人税法上、事前確定届出給与という名称で存在します。
一定の手続きと支給を行えば、法人税の計算上で費用として認められることになります。
★一定の手続きと支給方法とは?
1.手続き
株主総会で役員賞与として決議をした日から1月以内に事前確定届出給与に関する届出書を税務署へ提出することになります。
例示:中小企業、3月決算を前提、株主総会は決算から2か月後と定款に定めている場合
上記の場合には、5月中に株主総会を開いて、開いた日から1カ月以内に提出することになります。5/25を総会開催日→6/25までに提出
2.支給方法
事前確定届出給与に関する届出書に記載した支給日に、記載した支給額をお支払する。
以上の条件があって初めて費用に認められることとなります。
★決算対策として役員賞与は使えるのか?
結論としては、使用できます。要するに、年1回の役員賞与と仮定するとその支給日を決算月に設定して支給してしまう方法です。こうすることで、従業員の決算賞与と同様に役員にも賞与を支給できます。ただ、役員賞与の使い勝手が悪いのは支給額は決まっているので、その支給額以上の金額を支給できないということです。ですから、その年の事業の予算管理がしっかりしていないとどの程度まで支給してよいのかという判断がつきません。
★役員賞与は社会保険対策になる!?
役員賞与が適正な手続きで支給できることは上記で確認してきました。今度は、役員賞与を使った社会保険対策はできないのか?という視点から見ていきたいと思います。例えば、年収を1,800万円と仮定して役員賞与を出さずに月ごとに支給すると、月額150万円の給料になります。これの社会保険は、平成29年3月時点の社会保険料率(年齢を40歳以上とします)で試算すると、月273,412円(会社負担と個人負担の合計)×12=3,280,944円が会社のキャッシュから支出されることになります。
では、月の給料を30万円、役員賞与を1,440万円で年収1,800円とした場合の社会保険は、月額89,226円×12=1,070,712円、賞与分935,118円合計2,005,830円となります。
3,280,944円-2,005,830円=1,275,114円分だけ社会保険の納付をしなくてもよいことになります。私は、上記のようにすればよいということではなく、社会保険の賞与分の計算対象となる金額が小さいのでその分社会保険の負担が減るということを指摘したいのです。
★役員賞与を社会保険料対策とした場合の問題点!
上記の税金上の注意点は2つあります。
1.個人の所得税の問題
これは、役員賞与なしの方が個人所得税の納付は少なくなります。というのは、社会保険を給料から差し引く金額が多くなるので、所得税の対象となる金額が減るからです。
2.1,440万円の役員賞与の否認の可能性
実務上、一番怖いのは1,440万円の役員賞与が高いのか低いのかがわからないので、税務調査で1,440万円の役員賞与が高すぎるという認定を受けて適正金額までしか認められないというリスクがあります。私のような税理士事務所にいる人間にとってもどの金額が高いのか低いのかはわかりません。同業他社の役員賞与の支給金額が分からないからです。
同業他社との比較として民間給与実態調査などを参考にして金額を探りながらやっていくことしかできないのが現状となります。
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