経営に簿記の知識は必要か?
仕事柄、経営者から簿記の知識は必要ですか?
と聞かれることがありますね。
結論から申し上げると、必要はありません。
必要なのは簿記の知識ではなくて、
簿記のルール、経理処理された後の会計資料の確認方法
といったものが必要となりますね。
最近、クラウド会計が進んできたことで、
ご自身で経理処理をする会社が増えてきました。
そういった会社、個人へ関与する税理士も増えたのですが、
ちょっと本末転倒な気がします。
今度は、クラウド会計のやり方を税理士が解説する
ということになってしまったからです。
クラウド会計の操作方法を覚えたところで、
残念ながら、売上が増える訳ではありません。
この観点から申し上げれば、税理士は税金計算や、
経理・会計の範囲に縛られていると思いますし、
逆に、経営者は自分で経理処理できることになって、
経営に使う時間を奪われ、税金のための経理から
脱却できていません。
まあ、税理士報酬の抑制をしたいということで、
自分でやっている場合も多いとは思いますが。
とどのつまり、簿記を覚えて、会計処理することが
社長の仕事なのか?ということですね。
全部、一人でやるということであれば、
それでも良いとは思いますが、
それでも、処理中心で、自社の宝を活かしきれていないと
感じていますね。
こういったことを思うので、今回は、
簿記の知識は不要で、簿記のルールを理解して、
会計資料の理解を深めて、経営に活かすことができるように
ということで、記事を書きたいと思います。
実務と簿記検定には乖離がある
さて、本編です。
ここでは、実務の経理と簿記検定には乖離、
つまり、違いがかなりあることを話します。
簿記検定の簿記の最大の問題点
経営者からは、会計処理が分からないと
大変だから、簿記検定を受けようかなあと
相談されることがあります。
私が思う簿記検定の最大の問題点は、
簿記検定に合格したところで、
経理の仕事はできないところです。
なぜできないのかというと・・・
簿記検定では、経理方法や会計処理、会計資料の作成
といったことを学んでそれを試験にしているわけですが、
問題形式のため、経理の仕事はできません。
例えば、りんご100円を掛けにて1個売った
という問題があるだけなのです。
試験の場面を想像すると大変簡単な問題なのですが、
では、実際の青果店で考えると、上記の問題が出ますか?
ということです。
実際には、売上をする前に、注文が来て、見積、
個数の確認、金額の交渉、実際に売買の成立、
仕入先から直送又は仕入れて納品、といった経緯を
たどってから、売上の処理を行うことになります。
工程は、大まかに申し上げて、上記のような感じですが、
では、売上のための資料はどのようなものがあるでしょうか?
これが即座にわからないことが簿記検定の
最大の問題点なのです。
また、簿記検定では、会計資料の作成も問題となります。
しかし、現実では、経理処理を行えば、会計資料は自動的に
作成されることになります。
全部の勘定科目の金額を集計して、試算表を作る、
貸借対照表・損益計算書を作成することはしません。
加えて、監査法人対象の会社となっていなければ、
簿記検定で必要となる会計処理基準で処理は行いません。
税金計算の基となる経理をしますので、
税務会計を導入して処理する方が一般的です。
つまり、中小企業や個人の経理をするためには、
税法の知識も必要ということになりますね。
実務でやっていることは?
さて、実務でやっている経理処理、会計処理では、
簿記検定のようなことはやっていないことが
ちょっとはわかって頂けたかと思います。
また、簿記検定をやってから経理をやると
かなり違和感があります。
なぜかというと、経理のための原始資料を作成する
ということから始めないといけないのです。
経理の仕事がどこまでですか?というと、
経理資料の作成、整理、会計ソフトへ入力、会計データの分析
こうったことは普通にできてほしいです。
近年では、できる経理さんとなると・・・
社内の業務フローの改善まで取り組むことがありますし、
社員教育的なこともやることもありますね。
中小企業の経理さんとなると、大体一人で、
経理、総務は普通にこなすことになりますし、
見積書、請求書、納品書の作成、
社会保険事務、社内規定の作成、電話応対、
債権債務管理など経理というか何でも屋さんです。
こうしたことを全部やるのが中小企業の経理という
イメージを私は持っています。
ですから、簿記検定だけでどうにかなるわけではないです。
自分一人でだけでやる、確かに一人であれば、それで完結です。
ですが、人を雇って、規模を大きくしてとなると、
社長がすべてをやること自体が時間の無駄。
そういったことではなく、簿記のルールや
会計資料の確認方法を理解することが大切です。
簿記のルールや会計資料を理解する
それでは、簿記のルールや会計資料の確認方法を
理解する大切さを考えてみたいと思います。
簿記のルールを理解する
なぜ、簿記のルールを理解する必要があるのか?
答えは、会計資料を確認する前提の知識だからです。
最低限の知識としては、資産、負債、純資産(資本)、
収益(収入)、費用(経費)という言葉は覚えておく
必要性がありますね。
上記の言葉がどうやって、増えたり、減ったりするのか
ということが簿記のルールです。
まず、貸借対照表という表に書かれる項目の
資産、負債、純資産から考えます。
貸借対照表の完成図
資産 | 負債 |
純資産 |
損益計算書の完成図
収益 |
費用 |
利益 |
最終的には、上記を作るために経理処理を行います。
ですから、この数字になぜなったのかということを
考える必要があるということになりますね。
また、今回は便宜上、上記の5つの言葉だけを
出しましたが、それぞれに勘定科目があります。
資産だと、普通預金、売掛金、
負債だと買掛金、借入金などです。
こういった細かな勘定科目も会計資料を見ながら
慣れていく必要がありますね。
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会計資料の確認方法を理解する
さて、それでは、会計資料の確認方法を
理解する必要性は何なのか?という理由です。
会計資料とは、上記の貸借対照表と損益計算書です。
これらの確認方法を理解しないと、経営できません。
どれだけの社長が経営の数字が分かっているのかは
分かりませんが、社長が確認すべきポイントを絞って
考えたいと思います。
まず、貸借対照表の話です。
こちらは、主にキャッシュフローの分析に使います。
次の項目を確認しておくとキャッシュフロー管理に
便利となります。
毎月の次の残高(残っている数字)です。
・現金
・普通預金
・売掛金
こちらは、資産の項目です。
・買掛金
・短期借入金
こちらは、負債の項目です。
上記の3つの資産の項目から2つの負債の項目を引くことで、
短期的な資金余裕があるかどうかを確認できます。
話は変わって、損益計算書の話です。
先ほどの表では、利益という部分ができました。
損益計算書では、いろいろな利益がありますので、
次の表のようにしたいと思います。
売上(収益) |
仕入(売上原価) |
売上総利益(粗利) |
販売費および一般管理費 |
営業利益 |
まず、経営の第一目標は、粗利の確保となります。
粗利以降の項目は、費用となりますので、
粗利によって会社でかかったコストをすべて賄う
ということになりますね。
そのあとに、注目してほしいのが、営業利益です。
営業利益は、本業のもうけとなりますね。
起業したての多くの会社は、営業利益となりません。
つまり、販売費および一般管理費を粗利で賄えない
状況があるということなのです。
こうなると一体どうなってしまうのかというと、
売上が無くても、事業を維持するお金が稼げていない
ということになりますから、
銀行からお金を借りるということになりますね。
以上、初歩の初歩として、わかりやすい部分を
かなり省いて解説しました。
このように、会計資料を理解することは非常に
経営に有意義な情報を得ることができます。
しかも、その情報は自社の情報なので、
最も自分にカスタマイズされた情報なのです。
売上や経営に集中するのが筋
それでは、私が思う社長の本来の姿について、
今までのことを踏まえて、申し上げたいと思います。
社長の仕事は、売上や経営に集中するのが筋
ということですね。
経理や会計がいくら好きであっても、
自分でやりたいと思ったとしても、
社長の最大で、根本的な仕事は、売上を持っていきて、
事業を継続させることです。
また、事業を継続させることで、
人、カネ、売上の心配ごとに挑むこと、
つまり、経営をすることだと思います。
中小企業を見ていると、どこかが抜け落ちている
社長がいる傾向があると思います。
例えば、
売上は持ってこれるんだけど、カネの心配をしていない社長。
売上は持ってこれない状態なのに、やたら社員に甘い社長。
売上とカネの心配はするけれども、人にやさしくない社長。
社長には、全部必要です!
つまり、売上を持ってくることができて、
常にカネの心配をして、人に甘くないことです。
かなりの人格者でないと、社長は務まらない
ということが理解できると思います。
ですから、事業とは自分の人間力向上のための
育成ゲームのようなものだと思っています。
現実的に考えると上記の3つを持っている社長は
ものすごいです。驚愕すべきだと思いますね。
仕事を取ってこれて、お金は大丈夫なのかと経理と話し、
人に甘くならないように、平等なルールで社員に接し、
給料も見合ったものを支給する。
大まかに申し上げても、上記のことをやっています。
できている人いるのかなあと思うくらいです。
ぜひ、事業をやっている人は、考えてみてください!
経営者って孤独なもの
最後に、経営者は孤独な存在です。
誰かが何かをやってくれるわけではないです。
もし、誰かに頼っている場合には、非常に甘いです!
だからこそ、全部を知ろうとする傾向や
やろうとする傾向があるのだと思います。
全部自分でやらないといけないのではないか?
という疑問ですね。
しかし、会社の経理をするといったことをはじめとした
バックヤード業務は、餅屋なのです。
専門家や経験者にやってもらった方が、効率的でわかりやすく、
自社にあっている人を雇えば、すごくうまくはまるわけです。
また、そういったバックヤード業務をやっている人に
社長は救われることも多いと思います。
社長業の難しさ、大変さは、社長にならないと分かりません。
ですから、孤独なわけなのです。
編集後記
今日から3連休ということで、私も休みます。
最近はプライベートな用事があるので、外出が多いです。
今日もちょっと外出してきます。
雪が心配なのですが、まあ、なんとかなるでしょう!
ではぼっち税理士の齋藤でした~
それではまた👍
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この記事は、その時の状況、心情で書いています。
また、法令に関しては、その後改正された場合には、
異なる取り扱いになる可能性があります。
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