【インボイス制度】令和5年税制改正大綱の少額特例と返還インボイスの交付義務免除を解説
こんにちは!
税理士・行政書士の齋藤幸生です!
今回は・・・
国税庁公表資料のインボイス制度
の負担軽減措置(案)のよくある
質問とその回答から抜粋して
少額特例と返還インボイスの
交付義務免除措置を解説します。
それでは、スタートです!!
少額特例とは?
少額特例とは、一定の適用対象者が少額の取引をした場合に、インボイス保存が不要になる制度
インボイス保存が不要になる
意味は
消費税の計算上で支払った
消費税を控除する仕入税額控除
を適用するためには
インボイスの保存が要件に
なっているところですが
インボイスの保存をしなくても
仕入税額控除が受けられるという
意味になります。
ただし、仕入税額控除の適用を
受けるための他の要件は必要
になります。
適用対象者とは
基準期間における課税売上高が1億円以下
又は
特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者
特定期間とは・・・
①個人事業主:前年1月~6月までの期間
②法人:前事業年度の開始の日以後6か月の期間
特定期間の5千万円の判定は課税売上高ではなく、給与の支払額の合計額で判定しても良いことになっています。
基準期間は
個人事業主は2年前になり
法人は前々事業年度です。
この期間の課税売上高という
消費税の課税対象になる取引の
売上が1億円以下がどうかが
適用対象者になる最初の
分かれ道になります。
そのあとに特定期間の判定を
行うことになります。
適用期間について
2023年(令和5年)10月1日~2029年(令和11年)9月30日までの期間
少額特例になる金額と判断
①少額特例が適用される金額は1万円未満
②判断は税込で判断
例えば、税込11,000の取引では
少額特例は使えないことになります。
「以下」ではなく「未満」なので
9,999円以下が少額特例の適用
対象取引になります。
返還インボイスの交付義務免除とは?
少額な返還インボイスの交付義務が免除になる制度
令和5年税制改正大綱の
返還インボイスの交付義務免除は
公共交通機関特例の3万円未満の
交付義務免除とは異なります。
違いは以下で明らかになります。
適用対象者とは
制限はなく、すべての方が対象
適用できる期間は?
適用期限はなく、2023年10月以降の取引でいつでも使える恒久的なもの
交付義務が免除になる金額
①交付義務免除になる金額:1万円未満
②税込、税抜の判断:税込1万円未満で判断
交付義務が免除となる
返還インボイスの内容とは
例えば、売手が負担する振込手数料に対するインボイス
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この措置は取引慣行として
振込手数料などが引かれて
取引先から売上金が振り込まれる
ような取引について
振込手数料を差し引いて支払った
取引先は収入になるため
当社はインボイスの交付義務が
あるところなのですが
少額なので交付義務を免除にする
という考え方になります。
では、話を変えて
公共交通機関の交付義務免除
との比較をしてみましょう!!
インボイスの交付義務免除 | 公共交通機関特例 | |
対象者 | すべて | 一定の旅客の運送事業 |
金額 | 税込1万円未満 | 税込3万円未満 |
このように違いがある
という理解ができていれば
問題はありません。
先ほどの少額特例とも比較を
行ってみましょう!
インボイスの交付義務免除 | 少額特例 | |
対象者 | すべて | 基準期間の課税売上高が1億円以下など |
金額 | 税込1万円未満 | 税込1万円未満 |
適用期間 | 恒久的 | 2029年9月30日まで |
このような形で双方に
違いがあります。
少額特例と交付義務免除の実務上の注意点とは?
上記までは概略的な制度の内容で
ここからは実務上の注意点を
それぞれの制度ごとに分けて
解説を行っていきます。
少額特例
適用期間は2029年9月30日と
なっているため
2029年10月1日以降は少額特例が
使えないことになります。
この点、消費税の納付税額を20%
にする2割特例の措置との比較を
申し上げると
2割特例の適用期間は
2023年10月1日~2026年(令和8年)9月30日までの日の属する課税期間
となっています。
対して少額特例は
2023年10月1日~2029年9月30日までの期間
となっているため2029年9月30日
が属する課税期間中まで適用される
という勘違いが起こりえます。
2029年9月30日までは
少額特例の適用はOKで
2029年10月1日からは
少額特例の適用はNGです。
取引金額の考え方は1回の取引で
税込1万円未満になりますので
例示
税込9,900円の消耗品と1,100円の雑貨を同時に購入した場合には、合計11,000円になるため少額特例は使えないことになります。
これを少額特例にしたいので
あれば、別会計にしてそれぞれ
購入する必要があります。
日給月給として個人事業主へ
支払っている場合の外注費は
月給の金額が通常の取引と
考えられるため少額特例の
取引には当たらない可能性が
高くなると思います。
返還インボイスの交付義務免除
実務上の取引に合わせて
考えてみましょう。
A社はB社へ売上11万円を請求しました。
B社は振込手数料440円を差し引いて
A社へお金を振込みました。
そうするとA社は売上11万円ではなく
110,000-440円=109,560円を
もらったことになります。
そうなると440円は値引きなので
A社は返還インボイスの交付義務が
生じるわけです。
交付義務免除の措置はA社が
交付するインボイスは免除する
ということになります。
しかし、次のような取引にすると
A社は別のところからインボイスの
交付を受けることになります。
A社はB社が差し引いてきた振込手数料を支払手数料として課税仕入として処理する場合には金融機関(使っている銀行)やB社から振込手数料に対するインボイスの交付を受けることになります。
要するに、差し引いた振込手数料
の取引は次のようになります。
①B社について
B社では実質的にA社から受けた請求額を減額してもらっていることから、B社の収入になるためB社は振込手数料に対するインボイスの交付義務が発生する②金融機関
金融機関は実質的にA社が負担した振込手数料が売上になるため、金融機関は振込手数料という売上に対するインボイスの交付義務が発生する
A社、B社、金融機関のどちらにも
全くメリットがない取引になります。
次のようにA社が処理することで
不必要なインボイスの授受は
必要なくなります。
A社で差し引かれた振込手数料を
会計上で売上の返還(値引)
として処理をします。
ただし、次の注意点があります。
①売上値引として処理場合には、変換の元となった売上に対する適用税率に合わせる
②帳簿には対価の返還等に係る事項を書いて、保存する
編集後記
ここまで解説しておいて
私が考えたことは
なるべく特例の適用を受けないで
インボイスをすべて取っておく
ことが最も業務を省力化できるのでは?
ということです。
少額特例であってもインボイス
不要だからとして保存せずに
いるといつの間にか適用期間後
にも保存を忘れる可能性があります。
返還インボイスの交付義務免除は
会計処理で何とかなるため
支払手数料として今までのとおり
処理を行い売上の対価の返還
として消費税の区分を設定すれば
問題ないことを国税庁が公表して
解説しているのです。
インボイス制度はなるべく
省力化して対応する方法を
考えたほうが実務上では
対応しやすいかもしれません。
では税理士・行政書士の齋藤幸生でした!!
それでは、また!
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