紙の約束手形2026年廃止に見る中小企業への影響を税理士が解説!
こんにちは!
税理士・行政書士の齋藤幸生です!
今回は・・・
紙の約束手形2026年廃止に見る
中小企業への影響を税理士が解説します。
・2026年に紙の約束手形がなくなる!?
・紙の約束手形がなくなって商取引が変わる?
・中小企業の資金繰りに注意喚起!
についてわかる記事です。
それでは、スタートです!!
2026年に紙の約束手形がなくなる!?
紙の約束手形が廃止されるまで
日本経済新聞の2020年2月17日の
電子版にて紙の約束手形がなくなる
という報道がありました。
経済産業省は2026年をめどに利用廃止を
目指す方針の様です。
全国銀行協会も連携して銀行振込や
電子記録債権(電子手形)への移行を
促すとのことです。
業界ごとに5年間の行動計画の策定を求められて
切り替えになる可能性があります。
現行の約束手形の使われ方
紙の約束手形を使っている業界は
製造業、工業品の卸売業、建設業です。
(私の経験上では上記だけですね。)
日本の場合には上場会社であったとしても
製造業であれば平気で約束手形を切ってくる
ということがあります。
建設業では準大手だと電子手形(でんさい)を
活用している場合があります。
約束手形の利点は実質的な支払猶予によって
資金繰りを楽にするメリットがあります。
報道では決済期間が平均110日とありますが
建設業だと長くて6カ月程度になります。
つまり、約180日です。
中小企業から売上の請求を受けた元請けが
約束手形を中小企業へ郵送するといった
使われ方をしてきましたね。
銀行振込だと請求後の回収期間が
長くて2カ月くらいなので比べると
6カ月は非常に長く感じます。
元請けとしては決済期日までに資金を用意して
それまではお金を他の事業に使えるので
非常に有利な事業を展開することができます。
私は税理士なので約束手形に関する税金について
解説をしておくと
約束手形や為替手形には印紙税が課税されます。
記載された金額によって次の通りになります。
記載された契約金額 | 税額 |
10万円未満のもの | 非課税 |
10万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超200万円以下 | 400円 |
200万円超300万円以下 | 600円 |
300万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 2,000円 |
1,000万円を超えるものについては
別途規定があるので確認しませんが
上記のように高くても2,000円で6カ月間
支払うことがない法的な猶予期間を
約束手形を振り出した方は得ることができます。
紙の約束手形がなくなって商取引が変わる?
決済手段を効率化しようと検討している
紙の約束手形がなくなって商取引が
変わるのでしょうか?
国としては銀行振込やでんさいへ
移行をしてほしいと考えています。
例えば、でんさいの決済期限を最短で
7営業日に現在はなっているところ
2022年度中に3営業日から活用できるように
システムを改修するようです。
また割高な利用料も改めるようです。
金融機関の他行あての手数料が800円前後で
手形の利用料を考えると手形の方が割安です。
上記の印紙税と郵送代を考えても
銀行の振込手数料の方が割高に
なっていることは分かるでしょう。
2021年度以降は新規利用者に利用料の一部を
現金で還元して早期の値下げも検討するようです。
こうしたことで銀行振込を使いやすくし
でんさいの活用促進を図る狙いがあるのだと思います。
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本当に銀行振込とでんさいで解決できるのか?
しかし、私は知っています!!
私が関与した中で銀行振込だけれども
最長の振込期限を設定されることがあります。
10か月後決済というあり得ない
振込期間を設定されていた関与先がありました。
請求書の振込期間のところに
翌々々々々々々々々々々々・・・
みたいな感じで羅列されていて
さすがに私は数えるのに心が折れて
関与先の経理担当者さんに
「これ、何か月後決済ですか?」と聞きました。
経理担当者さんは苦笑いしながら
10か月後ですね・・・
どちらに請求していたのかは申し上げませんが
この様なことがありますね。
銀行振込が主流になったとしても
債権の回収サイトについて規制を入れないと
約束手形よりも悲惨な決済期限になる
可能性があります。
ただ、でんさいは有効のような気がします。
電子的な債権になりますので印紙税不要です。
決済期限が3営業日になるのであれば
銀行振込よりも活用されて良いのではないかと
私は考えています。
問題は実務をやっている担当者だと思います。
実務をやっている担当者は意外に保守的です。
でんさいは取引先が導入してくれるかどうかが
カギになります。
でんさいネットを使うためにはシステムを
会社に導入する必要があるためです。
事前に金融機関に申込を行うことが必要で
インターネット環境も必要です。
ハッキングといったネットリスクから
解放されるわけではないです。
要するに、でんさいを導入しなくて済む理由が
でんさいのデメリットにあるわけですね。
結論としては銀行振込は手数料が下がって
割安になれば使われる可能性はありますが
決済期限の問題が実務上あります。
パワーバランスで決済期限が
決まってしまう可能性があるためです。
でんさいはシステムの事前導入などが必要で
実務の担当者の保守性に応じて普及するかどうかが
未知数だと思います。
基本的には紙の約束手形がなくなれば
相対的に銀行振込へ移行していく
ということになるのではないかと思います。
中小企業の資金繰りに注意喚起!
紙の約束手形がなくなることで
中小企業の資金繰りに注意が必要に
なるかもしれません。
中小企業金融を考えると次のようになります。
①紙の約束手形を銀行で割り引く
→資金調達としては最も簡単となります。
②信用保証協会付融資
→2番目に資金調達が楽です。
③手形転がし
→金融手形を発行して金融機関に引き取ってもらうので
財政状況が良くない会社だとちょっと難しいです。
④プロパー融資
→会社と金融機関の相対契約になります。
金融機関の基準に合わないとできません。
⑤当座貸越
→融資の王様ですが、ハードルが高いです。
上記の中から手形転がしがなくなるかも
しれないなと考えています。
手形転がしは金融手形という類型になりますが
実質的には約束手形を会社が発行することになります。
要するに今回の紙の約束手形が必要なわけです。
普通に考えるとなくなるんだろうなと思います。
昔から続いている中小企業だと
メインバンクの信用金庫があって
そちらと手形転がしをやっている可能性があります。
手形が転がせなくなるわけですから
資金繰りに影響がでてくるわけです。
(借りっぱなしができなくなるわけですね。)
因みに①の手形割引ですが
同様の処理がでんさいで可能です。
でんさいを使っている場合には
決済期日前に割引くことが可能となります。
ただでんさいを導入している取引先で
かつ、自社でもでんさいが決済できるように
しておく必要があります。
結果、取引先がでんさいを導入しておらず
手形割引と同様の効果を得ることができない
可能性があり、資金繰りに影響を及ぼす
可能性があるわけですね。
最後の砦となった銀行振込になりますが
最悪のパターンは決済期限を長くされる
ということになります。
このようなことが起こる可能性が高い業種は
IT業に多いように思います。
短くても3か月後入金といった場合があったりして
契約に応じて売上金が入金される期限が異なる
ということがあります。
決済期限が延ばされるのは請求金額が
多くなればなるほど、大手の会社と取引で
あればあるほどです。
資金繰りにどのような影響があるのかを
前もって検討しておくとひっ迫した
資金繰りにならないと思います。
準備が大切ということですね。
編集後記
菅政権がデジタルを推進している都合上
紙の約束手形が廃止という流れになったのでは?
と考えています。
約束手形を無くしても下請法を大手企業に
守らせるといったことも一緒にやらないと
中小いじめになってしまう可能性がありますね。
この点、独占樹司法上の優越的地位の乱用に
あたれば良いのかもしれませんが
現実的には取引をした中小企業が
公正取引委員化へ密告しないと把握されない
と考えられます。
密告すると誰が告げ口したのか?
ということで犯人探しが行われる可能性があるので
もし見つかった場合には取引停止といった
経済的な運用をされる可能性が高いですね。
では税理士・行政書士の齋藤幸生でした!!
それでは、また!
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