サイトアイコン 問題解決を後押しする都庁前のLiens税理士事務所 齋藤幸生

2018年度税理士職業賠償責任保険の事故事例を解説する!

2018年度税理士職業賠償責任保険の事故事例を解説する!

今回は、2018年度税理士職業賠償責任保険の

事故事例を解説していきます。

 

私は、税理士職業賠償責任保険に独立時から

加入しているので、事故事例集が郵送されてきます。

 

2018年度も税賠がかなりあったようですので、

情報共有を目的としての記事です。

 

一般納税者の方たちにおかれましては、

自身も税理士への関与がある場合には、

事故事例を通して事前に税理士に相談して、

適用漏れがないようにして頂ければと思います。

 

それでは、スタートです!!

 

支払件数と支払金額を解説

全体的な総括

まずは、支払件数と支払金額を確認していきます。

因みに、集計の事業年度は、税務署と同様、

2018年は2018年7月~2019年6月までとなります。

 

支払件数は、2018年度では532件となっています。

支払金額は1,776百万円です。

つまり、約18億円となっています。

 

2013年度では、支払件数261件で、

2017年度では527件となっています。

 

つまり、税賠保険を使う件数が増加傾向と

なっている状態ですね。

 

支払金額は、2013年度は746百万円(約7億5千万円)で、

2017年度は1,998百万円(約20億円!)でしたので、

支払金額は2018年度は2017年度に比べると減少しました。

 

ただ、支払金額は年度によってばらつきがあり、

税賠保険の対象となっている件数が増加しているので、

今後は、支払金額が増加する可能性があります。

 

個別の総括

支払金額別

それでは、一定の区分における支払金額別の

件数を確認していきます。

 

支払金額別 件数 支払金額合計
500万円未満 435件(割合81%) 684百万円(約7億円)
500万円以上1,000万円未満 62件(割合11%) 409百万円(約4億円)
1,000万円以上3,000万円未満 32件(割合6%) 496百万円(約5億円)
3,000万円以上5,000万円未満 2件(割合0.3%) 87百万円(約9,000万円)
5,000万円以上1億円未満 1件(割合0.15%) 100百万円(1億円)

 

支払金額別に見てみると、500万円未満が

圧倒的に多いことが分かります。

 

因みに、500万未満の支払金額の平均金額を算出すると、

1件当たり、約160万円の支払を行っていることになります。

 

税目別

税目 件数 支払金額
消費税 258件(割合48.5%) 848百万円(8億4,800万円)
法人税 128件(割合24%) 475百万円(4億7,500万円)
所得税 91件(割合17%) 259百万円(2億5,900万円)
相続税 25件(割合5%) 98百万円(9,800万円)
贈与税 20件(割合4%) 62百万円(6,200万円)
その他 10件(割合2%) 34百万円(3,400万円)

 

やはりというべきでしょうか?

消費税がダントツで多いことが分かります。

 

件数、支払金額でも堂々のTOPです!

おめでとうございます!!
(全然、おめでたくないのは言うまでも
ないことです。)

 

以下で触れますが、普通に関与していれば、

税理士であれば間違うことがない判断で

見誤っている件数が多いです。

 

また、昨今ちょっと税理士でも「?}となる

税制がありますので、それをミスしている場合も

ありますね。

 

ただ、税理士は専門職であり、ミスはミスです。

しかも、お金にまつわることですから、

ミスした時の補填はお金でなされてしまいます。

 

税務賠償となっている事案を解説

それでは、税務賠償となっている事案を件数が

多かったものをピックアップして解説していきます。

 

まずは、消費税です。

最も多いミスは、

簡易課税不適用届出書の提出失念です。

 

件数は93件ですので、消費税での支払件数での

割合は、36%になります。

 

つまり、原則課税に戻していれば、

納付又は還付となったケースがあって、

差額を税務保険で支払ったということです。

 

続いても簡易課税です。

簡易課税制度選択届出書の提出失念です。

つまり、簡易課税のほうが有利だったのに

選択をしなかったケースですね。

 

件数は42件で、割合は16%になります。

 

事案として想定できるのは、簡易課税で計算した納付額と

原則課税で申告して実際に納付した金額の

差額を税務保険で支払ったということです。

 

次に課税事業者選択届出書の提出失念です。

件数は35件、割合は13%になります。

 

事案としては、課税事業者を選択しておけば、

還付となったにも関わらず、選択しなかったことで、

消費税の還付を受けることができなくなった

ということだと思います。

 

ですから、還付される金額自体を計算して

還付金額相当額を税務保険で支払った

ということになりますね。

 

このように届出書関係だけで、

消費税の全件数のうち65%を占めています。

 

消費税の有利不利判定をできない税理士事務所です!

と言っているようなものです。

 

実際には、職員に丸投げ、消費税の有利不利を

計算する余裕もないほど仕事を受けている

といったことがあるのだと思います。

 

そこから導き出される結論は、

関与先の管理不足、事務所内部の管理不足に

集約されるのだと思います。

 

 

 

 

 

では、法人税について確認していきます。

こちらは、所得拡大促進税制の適用失念が

最も多い結果となっています。

 

件数では54件で、法人税の発生件数のうちで、

割合は42%になっています。

 

消費税と思うことは同様なのですが、

前年度の給料よりも多い場合には、

真っ先に検討しないとまずい税制です。

 

検討できない状態になっているとしか

考えることができません。

 

あと、所得拡大促進税制の計算ミスも

事案にはあります。

 

この点は、制度設計がちょっと複雑なので、

税理士の間でも「?」となっている人が

多いのだと思います。

 

法人税で2番目に多いものは、

事前確定届出給与の提出失念・記載誤りです。

 

件数は27件で、割合は21%です。

うーんという感じです。

 

やはり届出書は鬼門なんですかねえ?

定時株主総会から1か月しか提出期間がないので、

あっという間に提出日が来てしまいます。

 

最後に所得税で1番ミスが多かった事案を

確認します。

 

上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用失念です。

10件発生していて、所得税の発生件数のうちでは、

割合は10%になります。

 

こちらも、基本的なことですね。

恐らく税理士又は職員の確認不足だと思います。

 

適用失念ということは、上場株式の取引を

やっていることを知っているにも関わらず、

税理士事務所側の確認が漏れたわけですね。

 

そうなると、翌年に利益が出た場合には、

前年の損失と翌年の利益を相殺できなくなりますので、

税額が発生してしまいます。

 

ですから、翌年になって気が付いた

ということなんだろうなあと推察します。

 

このように、ミス事案を確認してみると、

実務上、簡単なことをミスして保険で補ってを

繰り返していると思います。

 

 

 

税務賠償事故を防ぐには?

それでは、上記のようにミスを防ぐことは

できないものでしょうか?

 

結論を申し上げると、税法は個別具体的なので、

管理を徹底する方法しかないです。

 

関与先によって、異なる確定申告書の作成、

税法判断を行っていきます。

 

税理士をやっている以上、個別具体的から

逃げることはできません。

 

私は現状、ぼっち税理士として活動しているので、

管理表の作成を行い、月末に関与先への請求書を

作成するときに、管理表から申告しないことを確認します。

 

また、申告したことを業務処理簿に付けて、

申告したことも確認していきます。

 

業務処理簿は、税理士に求められている作成書類ですが、

こちらを作成することで、申告をする、申告をしない

という確認のためにも使えますね。

 

基本的と上記では申し上げましたが、

保険を使うようなミスを考えると、

管理ができていない、確認ができていない

ということになるのだと思います。

 

風のうわさで聞きますが、

税務保険を使う税理士はリピーターが多いようです。

 

そうなると、リピーターの多くは、

自分のミスを顧みず、管理せず、確認しない

ということになりますね。

 

最後に、税務保険が適用されなかった事例を参考に、

如何に管理と確認が大切なのかを考えます。

 

保険金が支払われなかった事例

非上場株式等の贈与税の贈与税の納税猶予の
特例措置が適用されず過大納付となった事例
(税理士職業賠償責任保険事故事例より引用)

<事故の概要>
税理士は、依頼者が事業を引き継ぐため、非上場株式の贈与を受けたい旨の相談を受けた。株価評価を行ったところ、業歴の長い法人であったため、非上場株式の評価も高く、贈与にあたり贈与税の納税負担が相応になるため贈与税の納税猶予制度の特例措置を提案し、依頼者は贈与税の納税猶予制度を利用して株式の贈与を受けた。
ところが、税理士は、贈与税の申告期限内に申告は行ったものの、担保提供書類の提出を失念してしまい、結果的に本特例の適用が受けられず贈与税を支払うこととなってしまった。これにより過大納付贈与税が発生し、税理士は依頼者から損害賠償請求を受けた。

「事故発生の経緯」
担保提供の資料がなかったため、税務署より指摘を受けて
事故が発覚した。

「事故の原因」
税理士は、贈与税の申告期限内に申告を行い、担保提供書を
提出できる状況にあったにもかかわらずすでに提出したと
思い込み、提出を失念したため。

「税賠保険における判断(保険金支払対象外とした理由)」
・税理士が贈与税の申告期限までに担保提供書を提出していれば、
依頼者は贈与税の納税猶予を受けることができた。

・一方で、先代経営者は非上場株式以外で5億円程度の財産を
所有していたため、相応の相続税が発生する見込みであり、
依頼者は贈与税の申告時に相続時精算課税制度の選択届出書を
提出していた

・結果として、贈与税の納税猶予制度を利用した場合と、
相続時精算課税を適用した場合の税額に、差額が発生しない
ことが確認できた。

・本件は、税理士の善管注意義務が果たせているとは言えないが、
発生した債務不履行に因果関係のある損害が発生していないことから、
保険支払いの対象外と判断された。

 

善管注意義務が云々と解説されていますが、

要するに、担保提供書を提出していれば、

事故は発生しなかったのですから、管理不足です。

 

また、贈与税は、2018年度では、

国税庁の確定申告サイト以外では、

電子申告できませんでした。

 

つまり、郵送にて申告をしていたはずです。

何を税務署へ提出したのかを郵便記録簿に

残しておけば、防げたのではないかと思います。

 

 


編集後記

私は、独立してから、税賠保険に加入しています。

理由は、自分への戒めのためです。

 

私も過去にミスをしたことがあります。

所得拡大促進税制の計算ミス、

 

売上が下がった法人で、過去の簡易課税が

復活したのに、確認不足で原則課税で

申告するミスといったものです。

 

上記は、関与先にも問題はあったのですが、

やはり専門家としての責任を問われるミスだと

今では思っています。

 

ミスは起こると考えておけば、

確認しよう!ミスしないようにやろうと

人間は考えます。

 

保険事故を回避する努力をこれからも

していきたいものです。

 

 

 

 

ではぼっち税理士の齋藤でした~
それではまた👍

 

youtube始めました!
税理士さいとうゆきおチャンネル

 

税務顧問や執筆などのご依頼はこちら↓

Liens税理士事務所ホームページ

 

この記事は、その時の状況、心情で書いています。
また、法令に関しては、その後改正された場合には、
異なる取り扱いになる可能性があります。

 

 

モバイルバージョンを終了