サイトアイコン 問題解決を後押しする都庁前のLiens税理士事務所 齋藤幸生

質問検査権と税理士と税理士法の関係を考察してみた

税理士登録申請時にもらった税理士法の本
なのですが、ようやく使う機会に恵まれた!!

 

質問検査権と税理士

質問検査権とは、言わずと知れた税務調査官が

税務調査の際に行使してくる調査の権利です。

 

キチンと法律となっています。

国税通則法74条の2から6までに規定があります。

 

税務調査に関して、税理士はお客様である納税者

に受忍義務があると説明する方が多いと思います。

 

確かに、国税通則法127条第2項には税務調査の

妨害等をした場合には1年以下の懲役又は50万円

以下の罰金に処するとなっていて、税務調査は

間接強制であるということになっています。

 

では、質問検査権はどのように運用されれば

良いのでしょうか?

 

実は、質問検査権の範囲や運用については、

最高裁での判決があります。

 

質問検査権が許されるときとは、「諸般の具体的

事情にかんがみ、客観的な必要性があるとき」

との判断がされています。

 

また、質問検査権の具体的な様態である、範囲

程度、時期、場所等は「税務調査官に一定の範囲の

裁量権を認めつつ、比例原則のような制約が

及ぶ」との判断がされています。

 

つまり、客観的な必要性が必要なので、

そのような必要性を明示しない質問検査権

は違法ということになります。

 

ですから、受忍義務は当然のごとくない

ということになるわけです。

 

ちなみに、現在は国税通則法74条の9にて

実地調査を行う場合にのみ、場所、目的

税目、期間、帳簿資料その他の物件として

事前通知することになっています。

 

 

税理士と税理士法の関係

さて、税理士法は調査と関係ないのでは?

と思う方が多いと思います。

確かに、税理士法は税理士に関する法律を

定めたものです。

 

しかしながら、意外な盲点があったりしますので

ここで紹介したいと思います。

 

税理士法34条です。それは以下の様な規定です。

「税務官公署の当該職員は、税理士業務の対象

となる租税の課税標準等を記載した申告書を提出

した納税義務者についてその租税に関して帳簿書類

を調査するため、その納税義務者にあらかじめ

調査の日時及び場所を通知する場合において、

その租税に関して税務代理権限証書を提出している

税理士があるときは、併せてその税理士に対して

調査の日時及び場所を通知しなければならない」

 

国税通則法74条の9では、事前通知するのは、

実地調査のときだけです。

 

しかし、税理士法34条第1項において、上記の

規定があります。皆さんは、上記の規定が

実地調査のみの時にしか通知されないと

解釈できますか?

 

実は、これについて国税庁へ解釈を尋ねた

税理士がいます。それよれば、すべての

調査に税理士法34条第1項は適用される

という趣旨の回答書が来たとのこと。

 

何が言いたいのかというと、実地調査以外の

調査では、税務調査官は事前通知が必要ない

と考えているわけです。

 

しかし。税理士法34条第1項によれば、

実地調査以外の調査にも当てはまるので、

帳簿種類の調査をするためには、税理士へ

通知をする必要がでてきます。

 

こういった法律と解釈で税理士は、

納税者の税務代理として納税者の権利擁護を

行っていかなければならないと私は感じます。

 

 

質問検査権と税理士法

質問検査権は、上記で書いた通り、受忍義務が

あり、客観的必要性を満たす場合には、

納税者は税務調査官からの質問に答えなければ

ならなくなります。

 

ところで、税理士法33条の2第1項においては

書面添付制度なるものがあります。

これを確定申告書へ添付すると、税務調査の前に

税務署は税理士への意見徴収をしなければ

ならないことになっています。

 

そこで、確認された事項については、

非違事項が発見されたとしても、税務署は

一旦、税理士へ事実に関する意見徴収を

行い、その上でしか処分を行えないこと

になっています。

 

要するに、書面添付制度とは、質問検査権

封じとしての効果があるというわけです。

 

では、書面添付制度を行っていない場合、

つまり、現状では書面添付制度を行っている

税理士は少数派なので、大多数の税務調査

における質問検査権を封じることはできない

のかという理屈が当然出てきます。

 

これについては、私は可能であると考えています。

理屈としては、以下の通りです。

 

質問検査権が認められるときは、客観的な必要性

がある場合と解されますので、もし、税理士が

納税者の決算についてより客観的な資料を

事前に残している場合には、質問検査権の

客観性を奪えると考えています。

 

例としては・・・

税務調査官が平成28年度の所得について、

期ズレがないか調べたいので平成29年の

資料も見せてくれませんか言ったとします。

 

しかし、税理士は、会社の決算について

期ズレがないことを確認した決算確認証を

納税者との合意の下、つくっていました。

 

それを平成29年分の資料に代えて、税務調査官に

提示を行ったとしたらどうでしょうか?

期ズレがないかをすでに税理士と納税者は、

決算時点で確認しているのです。

 

それに対する事実も税理士が確認して

資料まで納税者との合意の下、作成して

いるわけです。

かなり客観的な資料ではないかと

私は思います。

 

こういったように、質問検査権の

客観性を失わせることによって、

質問検査権を封じる手立てを税理士は

納税者に行っていってほしいと

私は考えています。

 

 

まとめ

質問検査権がどのように運用され、範囲は

どのくらいなのかを知っておくことは

とても重要なポイントになります。

 

巷では、税理士でさえ、税務調査は交渉

次第だから・・・といったことを仰る

方がいますが、それは間違いです。

 

日本は法治国家ですから、基本的には

法律行為として議論をしていくことが

まっとうなやり方だと私は思います。

 

税理士は法律家として常に、法律を

勉強してリーガルマインドを磨いて

ほしいと考えています。

 


編集後記

昨日はskypeでお客様との面談でした。

反省点があります。

効率性を重視しようとして、個人的な

ことを聞くことが減ったように感じました。

 

ひょっとしたら、そういったことが

足らないかもなと現状痛烈に反省して

いたりします。

 

まだまだ人間として成長の余力がある

ということなのですが・・・

もっとお客様へ寄り添った対応が

必要ではなかと思うわけです。

 

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